植田日銀総裁が就任 戦後初の学者、10日会見

 元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏(71)が9日、第32代の日銀総裁に就任した。学者出身は戦後初。10日に就任記者会見に臨み、物価上昇率を2%で安定させる政府と日銀の目標達成に向け、前任の黒田東彦氏(78)が10年間講じてきた大規模な金融緩和策を当面続ける意向を表明する見通しだ。5年の任期中に大規模緩和を脱し、金融政策を本来の姿に戻す「出口」にたどり着くことが課題となる。

植田和男氏
植田和男氏

 植田氏は10日に岸田文雄首相と面会し、辞令を受け取る方向で調整している。その後、3月20日に副総裁に就いた前金融庁長官の氷見野良三氏(62)と前日銀理事の内田真一氏(60)とともに会見する。4月12、13日に米首都ワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など一連の会合で国際舞台にデビューする。
 衆参両院の2月の所信聴取では、賃金増を伴う形で物価が2%上昇する経済の好循環には「なお時間を要する」と述べ、「金融緩和を継続し、経済をしっかり支えることで企業が賃上げできる環境を整える」と強調した。好循環が見通せるようになれば「金融政策の正常化に踏み出すことができる」とも語った。
 一方で、金利を低く抑える大規模緩和策は「さまざまな副作用も生じている。工夫を凝らしながら継続することが適切」と話した。副作用を抑えるため、必要に応じて政策を修正する考えだ。
 日銀は長期金利の上限を「0・5%程度」としているが、10年物国債の利回りが本来の水準より極端に低くなる市場のゆがみが問題になっている。植田氏が総裁として初めて出席する4月27、28日の金融政策決定会合で、上限の引き上げや撤廃を決める可能性がある。

 植田 和男氏(うえだ・かずお)東大卒、米マサチューセッツ工科大博士課程修了。東大教授を経て98年4月から05年4月まで日銀審議委員。17年4月から共立女子大教授を務めた。71歳。静岡県出身。

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