ふるさと納税、新ステージ 都市部も返礼品充実 税流出に危機感【スクランブル】

 ふるさと納税を募るのに慎重だった都市部の自治体の間で、返礼品を充実させる動きが広がっている。寄付金の争奪戦に加わらなければ、税収の流出に歯止めがかからないとの危機感が背景。識者からは、制度が「返礼品競争の過熱」「法律による規制」に続く新たなステージに入ったとの指摘が出ている。

ふるさと納税の寄付を募る東京都世田谷区のサイト画面。食事券やスイーツなどの返礼品が並ぶ
ふるさと納税の寄付を募る東京都世田谷区のサイト画面。食事券やスイーツなどの返礼品が並ぶ
ふるさと納税の動向イメージ
ふるさと納税の動向イメージ
ふるさと納税の寄付を募る東京都世田谷区のサイト画面。食事券やスイーツなどの返礼品が並ぶ
ふるさと納税の動向イメージ

 「流出した財源を一部でも取り戻す」。返礼品競争にくみしない形で寄付を募ってきた東京都世田谷区は昨年11月、返礼品の拡充に踏み切った。追加したのは区内の洋菓子店のスイーツや、レストラン食事券など約100種類。担当者は「寄付が増えた」と手応えを感じている。
 横浜市は2023年度から、返礼品に旅行クーポンを加えたほか、寄付の仲介サイトも増やす。21年度の寄付額は約3億4千万円で、25年度に20億円まで伸ばす目標だ。東京都新宿区も23年10月から初めて返礼品を贈る。
 ふるさと納税で寄付すると、原則として寄付額から2千円を差し引いた額だけ、翌年度に居住自治体に納める住民税などが減る。寄付先は、海産物や牛肉など地方ならではの特産品が豊富な自治体が上位だ。
 一方、世田谷区は21年度の寄付獲得額が約1億5千万円だけで、22年度の住民税減収は約87億円に達した。多くの自治体は、減収分の75%が国の地方交付税で穴埋めされるが、財政が豊かとみなされる東京23区などは対象外。世田谷区担当者は「税収減が財政を圧迫している」と返礼品充実の背景を語る。
 法政大の平田英明教授(日本経済論)は「制度が新たなステージに入った」と指摘する。第1段階は制度が始まった08年からの約11年間。途中で寄付上限が引き上げられて利用者が急増し、家電や金券などの豪華返礼品も登場した。
 第2段階は、返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」に法規制した19年6月以降。そして22、23年ごろからを「税流出が止まらない都市部がやり返そうとしている第3段階」と位置付ける。
 今後はどうなるのか。都市部は海産物などの人気返礼品を贈るのが難しい。世田谷区のようにレストラン食事券を用意した場合、寄付するのは気軽に行ける距離に住む都市部の住民が多くなる可能性が高い。このため平田教授は、都市部同士で税収を奪い合う状況もあり得るとみている。
 ふるさと納税は開始から約15年が経過した。平田教授は「過度な税流出は自治体の政策をゆがめる」と問題視。高所得者層は多額の寄付が可能な仕組みになっており、居住自治体の減収額も大きいとして、寄付可能額を抑えるなどの見直しを訴えた。

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