奨学金の年収要件、600万円に 給付型、多子世帯と理系学生対象

 文部科学省は4日、低所得世帯の大学生らに対する高等教育修学支援制度の2024年度からの改正点を公表した。返済不要の給付型奨学金と授業料減免の対象を一部中間層に拡大するのが柱。子ども3人以上の多子世帯と私立校の理工農系学生に限って、保護者の世帯年収の上限を従来の約380万円から約600万円に緩和する。

文部科学省
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高等教育修学支援制度改正のポイント
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高等教育修学支援制度改正のポイント

 現行制度は、世帯年収約270万円以下なら授業料が大幅免除となるなど所得に応じて段階的に支援額が変わる。改正により年収約380万~約600万円のグループを新たに設定する。多子世帯には満額の4分の1程度(私大生で最大約40万円)を支援する。理工農系では、私立文系の平均授業料との差額を支援する方向で、年30万円前後と見込んでいる。
 対象は多子世帯10万人と理工農系10万人の計20万人と想定。一定の授業料減免を行った上で、どの程度の奨学金を支給するのかといった詳細をさらに検討し、予算要求につなげる。
 また、大学院在学中に授業料を徴収せず修了後の所得に応じて分割納付を求める「後払い」の新制度についても、基準となる就職後の所得水準を公表した。導入は24年秋で、納付が始まる本人年収を原則約300万円に設定。扶養する子どもが2人いれば約400万円に緩和するなど子育て世帯に配慮する。低所得でも修了後に月2千円前後の支払いを求める。
 大卒後の貸与型奨学金返済の仕組みも変更。返済期間を長くして毎月分を減らす制度について、申請可能な本人年収を325万円以下から400万円以下に緩和する。
 政府は3月31日に「次元の異なる少子化対策」のたたき台となる試案を公表。奨学金拡充などを盛り込んでいた。永岡桂子文科相は4日の閣議後記者会見で「家庭の教育費負担は重く、少子化の要因の一つ。負担軽減のため奨学金制度の充実に努める」と述べた。

 修学支援制度 低所得世帯の子どもが大学や専門学校などの高等教育機関に進学するのを後押しするため、入学金と授業料の減免と、返済不要の給付型奨学金の支給をセットで実施する国の制度。2020年度に始まり、21年度は前年度より約4万8千人多い約31万9千人が利用した。現行では住民税非課税世帯か、それに準じる世帯が対象で、世帯年収の増加に応じて支援金額は段階的に減少する。

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