ギター演奏、上達の近道? ピッキング軌道の可視化装置

 ギターを弾く際に重要なのが、利き手で弦をはじく動作の「ピッキング」。この軌道や良しあしについて、腕時計のような形の装置を使ってパソコン画面上に表示する方法を、東京都在住のロックギタリスト加茂フミヨシさん(48)が考案した。「これまで説明困難だった『暗黙知』の技術を可視化でき、演奏習得の効率化につながる」と説明。ギターレッスンなどに活用したい考えだ。

手の動きを検知する腕時計のような形の装置=2月、東京都八王子市
手の動きを検知する腕時計のような形の装置=2月、東京都八王子市

 エレキギター演奏では小さな板状のピックを利き手の指でつまんで弦をはじくのが一般的。加茂さんによると、音色にも影響し「音楽的表情」を決める重要な動作だ。ただ、音程などは楽譜で確認できるが、ピッキングの方法については感覚的な表現で説明するしかなかった。
 装置はピックを持つ側の手首にベルトで巻いて取り付ける。重さ37グラムで演奏の邪魔にならない。手首や肘の動きを検知するセンサーを内蔵する。ピッキングすると、無線で接続したパソコンの画面にリアルタイムで軌道が描画される仕組みだ。
 フォームのほか、リズムの揺らぎも確認できる。自分の記録を見返すことや、優れたプレーヤーのピッキングを記録することも可能だ。加茂さんは「耳で聞いても分からない癖や欠点が分かる。レッスンの進行度を教師も生徒も確認できる」と解説する。
 加茂さんは音楽専門学校の教員を務めながら、東京工科大の大学院でこうしたことを研究。論文にまとめて今月、博士号(工学)を取得した。ギタリストでは英ロックバンド「クイーン」のブライアン・メイさんが天文学の博士号を取得した例がある。
 加茂さんは「彼の博士号取得がモチベーションになった。テクノロジーで新しい音楽を生み出す『演奏工学』を今後、確立したい」と語った。

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