植田日銀総裁を国会提示 政府人事案、戦後初の学者

 政府は14日、4月8日に任期満了を迎える日銀の黒田東彦総裁(78)の後任として、元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏(71)を充てる人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。学者出身の総裁は戦後初となる。2人の副総裁候補は前金融庁長官の氷見野良三氏(62)と日銀理事の内田真一氏(60)。衆参両院の同意を得て総裁は4月9日、副総裁は3月20日に就任する。任期はいずれも5年。

左から植田和男氏、氷見野良三氏、内田真一氏
左から植田和男氏、氷見野良三氏、内田真一氏

 衆参両院の議運委は3人から金融政策運営の考えを聞く所信聴取を24日以降に実施する方向。植田氏は14日朝、東京都内で記者団に「国会で、きちんといろんな質問にお答えします」と述べた。自民党内では大規模緩和からの転換を急ぐ「タカ派」の起用への警戒感があったが、植田氏は金融緩和を当面続ける考えを示している。人事案への異論は目立たず、3月上旬から中旬の衆参本会議で可決される公算が大きい。
 黒田氏が2013年4月に始めた大規模緩和策は、急激な円安や金融市場の機能低下といった副作用が目立つ。異次元の金融政策を正常化させる「出口」を探ることが新体制の課題となる。
 植田氏は金融政策の研究が専門で、東大教授を経て1998年から7年間にわたり日銀の審議委員を務めた。2000年8月の金融政策決定会合で、日銀がゼロ金利政策の解除を決定した際には反対票を投じており、金融緩和に積極的とされる。一方で金融緩和の副作用にも配慮するなど「バランス型」として知られる。
 日銀と財務省(旧大蔵省を含む)出身者以外が総裁に就くのは、1964年から69年まで務めた第21代の宇佐美洵氏(旧三菱銀行出身)以来。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン前議長(現・米財務長官)など、主要国の中央銀行では経済学者がトップを務める例が少なくない。

 日銀 日本の中央銀行で正式名称は日本銀行。1882(明治15)年に開業した。東京都中央区日本橋本石町に本店を置き、従業員は2022年3月末時点で4624人。物価と金融システムの安定が主な役割で「通貨の番人」と呼ばれる。総裁と2人の副総裁、審議委員6人の計9人による「政策委員会」を最高意思決定機関とし、金融政策決定会合を年8回開く。正副総裁、審議委員の任期はいずれも5年で、衆参両院の同意を得て内閣が任命する。

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