日銀総裁に植田和男氏を起用へ 首相意向、戦後初の経済学者出身

 岸田文雄首相が4月8日に任期満了となる日銀の黒田東彦総裁(78)の後任に元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏(71)を起用する意向を固めた。関係者が10日、明らかにした。経済学者出身の総裁は戦後初となる。副総裁は前金融庁長官の氷見野良三氏(62)と日銀理事の内田真一氏(60)を候補とする。14日に国会に人事案を提示し、衆参両院の同意を得て総裁は4月9日、副総裁は3月20日に就任する。任期はいずれも5年。

記者会見する「構造変化と日本経済」専門調査会の植田和男会長(手前)=2008年7月、内閣府
記者会見する「構造変化と日本経済」専門調査会の植田和男会長(手前)=2008年7月、内閣府
元日銀審議委員の植田和男氏
元日銀審議委員の植田和男氏
記者会見する「構造変化と日本経済」専門調査会の植田和男会長(手前)=2008年7月、内閣府
元日銀審議委員の植田和男氏

 植田氏は金融政策の研究が専門だ。東大教授から1998年4月に日銀審議委員になり、再任されて2005年4月まで7年間務めた。在任中、日銀が採用したゼロ金利政策や世の中のお金の量を増やす量的金融緩和といった非伝統的な景気刺激手段を理論面から支えた。岸田首相はこうした実績を高く評価した。黒田氏が13年に始めてから10年近くになり、急激な円安と歴史的な物価高を招くなどの弊害が目立つ大規模緩和策から脱却する「出口」を探ることが植田氏の課題となる。
 植田氏は10日夜、共同通信などの記者団に対し「現状の日銀の金融政策は適当だ」とした上で「当面は金融緩和を続ける必要がある」と語った。24日に衆院議院運営委員会で所信を表明する見通しだ。首相は総裁人事に関し「14日の国会への提示に向けて調整中だ」と官邸で述べた。
 日銀と財務省(旧大蔵省)出身者以外が総裁に就くのは、1969年まで務めた第21代の宇佐美洵氏(旧三菱銀行出身)以来。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン前議長(現・米財務長官)など、主要国の中央銀行では経済学者がトップを務める例が少なくない。首相が植田氏を総裁に選んだことは日銀の転機になる可能性がある。
 氷見野氏は2020年7月から1年間、金融庁長官だった。金融規制に精通し、国際交渉で活躍した。内田氏は金融政策を立案する企画局を中心に歩み、18年4月から理事を務めている。新潟支店長の経験もある。現副総裁は日銀出身の雨宮正佳氏(67)と早大教授から転じた若田部昌澄氏(57)。2人とも3月19日に任期を終える。
 黒田氏は財務省の国際部門トップである財務官出身で、13年3月に日銀総裁になった。在任期間は21年9月に歴代最長を更新した。

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