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地域医療再編 病床削減に抵抗強く 合意形成難航、コロナ拍車【大型サイド】

 政府は、2040年ごろに高齢者数がピークとなることから、地域医療の再編に乗り出す。医療提供体制を高齢化や人口減少に伴う需要の変化に合わせるのが狙いだ。過剰な病床を減らし、地域によってばらつきのある医療費を是正する思惑もある。25年に向けた取り組みでは、医療機関や地域住民には抵抗も強く、合意形成は難航。新型コロナウイルスの感染拡大も拍車をかけてきた。

地域医療構想での病床数見直し
地域医療構想での病床数見直し

 ▽役割転換
 病床が過剰だと不必要な入院や長期療養が増える傾向にある。持病を抱える高齢者の割合が大きくなれば「治す医療」より「支える医療」への対応が必要になる。政府は、手術などを行うため看護師の配置が手厚く医療費が多くかかる「急性期」の病床を減らして、リハビリ向けの「回復期」へ転換するほか、在宅医療の充実を掲げてきた。「かかりつけ医」の制度化も進める。
 16~17年に都道府県が、団塊の世代が全員75歳以上となる25年時点の「地域医療構想」を策定し、各地域で具体的な再編協議が始まった。しかし病床の役割転換や削減は医療機関の経営に直結するため停滞している。厚生労働省は19年、再編や統合の議論が必要だとして400超の公立・公的病院を名指しして公表する異例の対応を取り、猛反発が広がった。
 ▽不安感
 翌20年から新型コロナの感染が広がり「地域の関係者による膝をつき合わせた協議」(厚労省幹部)が難しくなったことに加え、病床の逼迫も生じ再編への不安感が強まり、さらにブレーキがかかった。
 厚労省は「高齢化と人口減少は着実に進む。新興感染症への対応も含め、地域医療の役割分担と連携を協議してほしい」と都道府県に求めている。新型コロナの対応に追われる病院側からは「検討が困難だ」との声が上がる。
 こうした中、厚労省は40年を視野に入れた新たな地域医療構想の策定に乗り出す。
 岸田文雄首相は20日、新型コロナの感染症法上の位置付けを、今春に季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる方針を表明した。厚労省幹部は「新型コロナを普通の病気として診療する体制を築くことも容易ではない」と語り、見直しをきっかけに地域医療再編の議論が着実に進む環境が整うかどうかはまだ見通せない。

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