テーマ : 読み応えあり

財源議論の自民特命委員会 防衛増税、対立の芽 国債ルールに見直し圧力

 自民党で防衛費増額に伴う財源の検討が本格的に始まった。萩生田光一政調会長が旗を振る特命委員会が発足。政府が決めた1兆円程度の増税幅を圧縮できるかどうか議論する。党内の増税反対論が、国債償還ルールの見直しを求める圧力として強まれば、政権内で対立の芽となりそうだ。

防衛費増額に伴う財源を検討する自民党の特命委員会初会合=19日午後、東京・永田町の党本部
防衛費増額に伴う財源を検討する自民党の特命委員会初会合=19日午後、東京・永田町の党本部
防衛財源確保の主な論点
防衛財源確保の主な論点
防衛費増額に伴う財源を検討する自民党の特命委員会初会合=19日午後、東京・永田町の党本部
防衛財源確保の主な論点


アイデア
 「歳出改革が薄弱だ。しっかり議論すれば増税のウエートを減らすことはできる」。19日午後、自民党本部。特命委の初会合で安倍派の柴山昌彦元文部科学相が訴えた。
 特命委は萩生田氏の提唱で設置された。萩生田氏は党内最大派閥・安倍派の幹部で、安倍晋三元首相の側近。顧問に同派から世耕弘成参院幹事長が就いた。安倍氏は生前、防衛費増額の財源に国債を唱えた経緯がある。
 岸田文雄首相は今回の防衛力強化で「未来に対する責任」として国債発行に頼らない道を選択した。だが、安倍派や保守系議員には増税に対する不満がくすぶる。
 一部で浮上する案が国債の60年償還ルールの延長。返済期間を例えば80年に延ばせば、毎年度の国債償還に充てる歳出を減らせるので、その分を防衛費に回せるというアイデアだ。
 特命委の議論でも早速、見直し論が上がった。党三役経験者は「みんな増税は嫌だ」とこのアイデアに同調する。

ごまかし
 国債償還期間の延長は国の借金を減らすわけではない。「国の財政に対する市場の信認を損ねかねない」(松野博一官房長官)との懸念がある。
 特命委に出席した防衛相経験者の石破茂氏は「60年使える兵器はない。償還ルール見直しで国民の負担が魔法のように消えるわけではない」と、岩屋毅氏は「借金で防衛力を賄うことになる。ごまかしに近い案だ」と記者団にそれぞれ語り、強い不満を表明した。
 首相が掲げた「未来への責任」と、世論調査で不人気な防衛増税のどちらを取るのか。
 連立を組む公明党は自民の状況を遠巻きに見つめる。北側一雄副代表は19日の記者会見で、償還ルールについて「国債発行の一つの歯止めだ」と指摘。財政規律をなし崩しにすることがないよう、くぎを刺した。

呼びかけ
 18日。萩生田氏は官邸を訪れ、特命委設置を首相に事前報告した。30分余りの会談で、首相は「中身をしっかり見てほしい」と要請。自民政調筋は「首相と萩生田氏が財源論で対立しているわけではない」と解説する。
 ただ、約60人が出席した特命委で、防衛増税や国債償還ルール見直しへの賛否は二分した。萩生田氏が安倍派などの増税反対・慎重論をどう誘導するのか注目される。
 19日の特命委を締める際、萩生田氏は呼びかけた。「党内で対立するのでなく、有権者に政府、党の考え方を説明できるよう議論を進めよう」

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞