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韓国で元徴用工問題討論会 関係改善へ日本寄り解決案 国内失望も安保、経済重視

 元徴用工訴訟問題で韓国政府は、日本企業の賠償支払いを韓国の財団に肩代わりさせる解決案を公表した。同問題での新たな謝罪も望めないとし、日本政府に寄り添う形に。韓国の原告支援団体や野党は「植民地支配の不法性を認めた判決の意味がなくなる」と失望を強めるが、尹錫悦政権は安全保障や経済での日本との関係改善を急ぐ。

元徴用工訴訟問題の韓国政府案の撤回を求める野党議員や市民団体=12日、ソウル(共同)
元徴用工訴訟問題の韓国政府案の撤回を求める野党議員や市民団体=12日、ソウル(共同)
元徴用工訴訟問題の公開討論会の聴衆ら。怒号が飛ぶ場面もあった=12日、ソウル(共同)
元徴用工訴訟問題の公開討論会の聴衆ら。怒号が飛ぶ場面もあった=12日、ソウル(共同)
討論会後、記者団に話をする原告側代理人の林宰成弁護士(中央)=12日、ソウル(共同)
討論会後、記者団に話をする原告側代理人の林宰成弁護士(中央)=12日、ソウル(共同)
韓国政府が表明した元徴用工問題の解決案
韓国政府が表明した元徴用工問題の解決案
元徴用工訴訟問題の韓国政府案の撤回を求める野党議員や市民団体=12日、ソウル(共同)
元徴用工訴訟問題の公開討論会の聴衆ら。怒号が飛ぶ場面もあった=12日、ソウル(共同)
討論会後、記者団に話をする原告側代理人の林宰成弁護士(中央)=12日、ソウル(共同)
韓国政府が表明した元徴用工問題の解決案


強行突破
 「最高裁判決から4年以上進展がなく、現実的な方策を探さなければいけなかった」。韓国外務省の徐旻廷アジア太平洋局長は12日の公開討論会で、原告らの高齢化にも触れこう訴えた。討論会で原告を支援する金英丸氏は「金のための訴訟でなく人権を回復するための訴訟だった」と政府案を批判。パネリストが政府案に関連した説明をすると高齢の聴衆らが「売国奴」などと怒号を飛ばす場面もあり、会場外では野党議員約40人が市民団体と共に案の撤回を求める記者会見をした。
 原告側代理人の林宰成弁護士は討論会後、記者団に「強制動員への反省と謝罪が必要だ」とけん制したが、韓国政府関係者は「全ての原告が望む水準まで待っていては解決ができない」と話す。原告側の説得は続けるとしながらも、強行突破を視野に入れている。

協力優先
 植民地支配を受けた歴史がある韓国は、日本の軍事力強化を警戒する国民感情はあるが、尹大統領は11日「日本も頭上を(北朝鮮の)ミサイルが飛ぶから、防衛費を増やし反撃概念を計画に入れた。それに文句が言えるか」と発言。安保情勢の悪化を前に、日本への歴史的感情よりも安保協力を優先したい考えがある。
 討論会で韓国外務省の趙賢東第1次官は、日本企業への賠償を命じた2018年の最高裁判決後「韓国への日本の直接投資は62%減った」と話し、経済面での関係改善の必要性を訴えた。

踏ん張り
 日本政府は1965年の日韓請求権協定で賠償問題は完全に解決したとの立場は譲らない方針。自民党保守派を中心に「日本側の負担は容認できない」との声が強く、政権として安易に妥協できない事情がある。
 2015年に政府間協議で苦労してまとめた元慰安婦問題に関する日韓合意が、後に世論などの反発を受けた韓国側によって事実上白紙化された苦い経験もある。徴用工問題の解決策も既に一部原告が反発。官邸筋は「韓国国内をまとめられるのか」と不安視する。
 それでも、日本政府は関係改善に積極的な尹氏の姿勢を肯定的に捉えており、尹氏の在任中に徴用工問題を解決すべきだとの意見は根強い。外務省幹部は「原告の反発があっても踏ん張っている。こちらも協力できるところは協力したい」と語った。(ソウル、東京共同)

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