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旧統一教会問題 法整備、調査で「包囲網」 焦点は解散命令請求

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡る動きが多方面で続いている。不当な寄付勧誘を禁じる被害者救済法が成立し、高額献金や養子縁組の調査も進む。元2世信者らが声を上げ、全国規模の弁護団が結成されるなど「包囲網」の様相だ。今後は解散命令請求の可否が焦点になり、来春の統一地方選では自民党と教団との関わりも問われる。

9日、参院消費者問題特別委員会で、質問に答える旧統一教会元2世信者の小川さゆりさん(仮名)
9日、参院消費者問題特別委員会で、質問に答える旧統一教会元2世信者の小川さゆりさん(仮名)
旧統一教会の問題を巡る動き
旧統一教会の問題を巡る動き
9日、参院消費者問題特別委員会で、質問に答える旧統一教会元2世信者の小川さゆりさん(仮名)
旧統一教会の問題を巡る動き


法整備
 「被害を見過ごしてきた政府の責任を果たしてほしい」。12月9日、被害者救済法案を審議する参院の特別委員会に参考人として招かれた旧統一教会の元2世信者小川さゆりさん=仮名=は、切々と言葉を紡いだ。
 救済法は、霊感商法で結んだ契約の取り消し範囲を広げた改正消費者契約法などと共に10日成立したが、マインドコントロール(洗脳)下の寄付規制が明文化されないなど、被害者や弁護士は「実効性が乏しい」と批判。来年の通常国会でも議論が続きそうだ。

実態解明
 「美しい伝統」と教団がうたう信者同士の養子縁組。許可なくあっせんを続けていた場合、金銭授受の有無にかかわらず養子縁組あっせん法に抵触する可能性があり、厚生労働省は調査を進めている。
 教団は11月の取材に、1981年以降745人の養子縁組があったとする一方、「あっせん等は一切行っていない」と説明。だが、教団関連の書籍には縁組に際し「家庭部長」が間に入ることや、「養子縁組申請書」を教団に提出するよう促す記述があるなど、組織性もにじむ。
 厚労省は12月までに、成立縁組の詳細などを尋ねる質問書を2度、教団に送付し、回答内容を精査している。関係者によると、教団はあっせん法が施行された2018年度以降の養子縁組は31件と回答した。
 数々の問題を指摘されながら、旧統一教会は長年、宗教法人として税の優遇を受けてきた。文化庁は解散命令請求を視野に、宗教法人法に基づく質問権の行使に初めて踏み切った。年明け以降も複数回の行使が想定され、着実に証拠を積み上げたい考えだ。
 11月22日の1回目は組織運営や財産・収支に関して質問。12月9日に回答が届くと、矢継ぎ早に2回目の質問を14日に郵送した。教団の組織的不法行為を認定した民事判決などについて資料の提出を求めており、回答期限は来年1月6日。
 文化庁幹部は、献金システムやノルマの解明が鍵とみる。「多額の献金を求め、実際に高額献金がされてしまう背景は何か。回答を分析して追加調査をする」と話した。

先送りも
 教団に注目が集まるきっかけは、安倍晋三元首相の銃撃事件だった。自民党との癒着が明るみに出て、岸田文雄首相は党と教団との関係を断つと宣言。だが対応は議員任せで、選挙支援などの真相解明にも後ろ向きだ。
 来年4月には統一地方選が迫る。法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は「地方議員は10票20票の差で当落が決まり、教団の票や支援の有無は死活問題だ。関係を断ったら断ったで、選挙活動にダメージとなる可能性もある」と指摘。「首相は解散命令請求を『やるやる』と言いつつ、地方選後に先送りすることもあり得るのではないか」との見方を示した。

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