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ツイッター SNS運営は「失格」 異能経営者に難題続出【大型サイド】

 米ツイッターのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が買収から2カ月足らずで辞任を表明した。後任が「見つかり次第」とツイッターに投稿したが、自らが始めた辞任の是非を巡る投票で、利用者の過半は賛成を投じ「経営者失格」の烙印を押した。電気自動車(EV)、宇宙開発、医療と時代の最先端を切り開いてきた異能の経営者にとっても、何億人もが集う交流サイト(SNS)の運営は難題が続出、勝手が違ったようだ。

ノルウェーで開かれた国際会議に参加するイーロン・マスク氏=8月(ロイター=共同)
ノルウェーで開かれた国際会議に参加するイーロン・マスク氏=8月(ロイター=共同)
マスク流ツイッター改革と結果
マスク流ツイッター改革と結果
ノルウェーで開かれた国際会議に参加するイーロン・マスク氏=8月(ロイター=共同)
マスク流ツイッター改革と結果

 ▽分断加速
 マスク氏は「言論の自由の絶対主義者」を自称し、ツイッターをタブーなき言論空間としてつくり替えようとしたが、投稿規制とのバランスに悩まされ続けた。4月に買収を表明した時には「ツイッターは事実上の“まちのひろば”になっている。法律の範囲内で自由に話せることが重要だ」としていたが、10月には「何を言っても許される自由すぎる地獄にはしない」と述べ、ぶれが生じている。
 トランプ前米大統領のアカウント復活などで右派からは歓迎される一方、デマや誹謗中傷対策が不十分だとして左派や人権監視団体などから批判が寄せられた。買収前にツイッターを「社会を分断している」と批判していたマスク氏の言動が、かえって分断を加速させる結果に。当初設置するとしてきた投稿監視の評議会は設置を見送り、経営判断は自身の直感とツイッター投票に頼らざるを得なくなっていた。
 ▽広告依存
 基本的に登録が無料のSNSは広告への依存度が高くなりがちだ。利用者同士のやりとりなどから趣味趣向が分かるため、企業としては対象を絞って広告を出しやすい。ただ、景気が悪くなれば、コスト削減策として広告を引き揚げる判断も早い。
 ライバルのフェイスブックを運営する米メタは、広告需要の減少を理由に従業員の約13%に当たる1万1千人を削減すると明らかにした。景気減速は企業規模の小さいツイッターにより重くのしかかる。
 マスク氏はツイッターの社員集会で「このままでは倒産の可能性がある」と強調。広告依存と低収益からの脱却を図るべく、社員の3分の2のリストラを断行し、有料プランを値上げしてサービスを拡充した。しかし利用者の支持を得られたとは言いがたい。迷走する経営を嫌ってか、広告主の離反も相次いだ。
 ▽想定内?
 マスク氏が実施したツイッター投票で辞任に賛成が過半数を占めた直後、EV大手テスラの株価は上昇した。市場はマスク氏がツイッターCEOを離れることで、テスラの経営により重点を置くことを期待している。テスラの株価はマスク氏のツイッター経営によるイメージ悪化も要因となり年初来で60%超下落。株主からマスク氏への圧力が高まっていた。
 マスク氏は11月にはツイッターに割く時間を減らし、時間をかけて後任の経営者を見つけられるようにすると述べていた。ツイッター投票によって辞任表明に追い込まれた形だが、マスク氏には結果は想定内だったと考えることもできる。(ニューヨーク共同=隈本友祐)

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