G7首脳の原爆資料館視察を調整 岸田氏、惨禍訴える狙い

 政府は、来年5月に広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に合わせ、各国首脳による原爆資料館への視察日程を入れる調整に入った。政府関係者が21日、明らかにした。米英仏などG7首脳そろっての視察が実現すれば初。岸田文雄首相が館内を案内し惨禍の実態を直接見てもらい、核兵器廃絶の意義を世界に訴える狙い。

原爆資料館の展示物=7月、広島市
原爆資料館の展示物=7月、広島市

 政府関係者によると、資料館視察は日本側から各国に働きかけている。ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が核使用の可能性を示唆している現状を踏まえ、G7で結束して核使用に断固反対するメッセージを打ち出す案が政府内で検討されている。
 資料館には、焼け焦げた衣服や、やけどを負った人の写真、防火用水に水を求めて息絶えた人々を描いた絵などが展示され、原爆投下直後の広島の惨状を把握できる。
 2008年に当時のペロシ米下院議長(民主党)、16年にはオバマ大統領が資料館に足を運んでいる。日本側は、原爆を投下した米側の意向を慎重に確認しているが、外交筋によると、バイデン大統領が訪れても米国内で問題にはならないとの見方が強い。
 首相は今年3月、エマニュエル駐日米大使と資料館を視察し、環境整備を図った。今月13日には、G7首脳による資料館視察や被爆者との対話を要望した広島市の松井一実市長と長崎市の田上富久市長に対し「理解はしている。調整をしていく必要がある」と語った。
 海外要人の資料館視察を巡っては、16年4月には当時のケリー米国務長官がG7外相のメンバーと共に訪れたが、資料館内部での取材は認められなかった。オバマ氏の見学も詳細は非公表とされた。今回、視察の様子を公開するかどうかが焦点となりそうだ。

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