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ツイッター マスク氏独断、経営混乱 自身進退も投票に

 米ツイッターを買収したイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、トランプ前米大統領のアカウント復活などを利用者による投票で決断。ついには自身の進退までを問う事態となり、結果は辞任賛成が多数を占めた。他の取締役を事実上解任しワンマン経営を進める企業家の混乱ぶりが露呈した形だ。

ワールドカップ決勝戦が行われたドーハの競技場に姿を現したイーロン・マスク氏(奥中央)=18日(ゲッティ=共同)
ワールドカップ決勝戦が行われたドーハの競技場に姿を現したイーロン・マスク氏(奥中央)=18日(ゲッティ=共同)
ツイッターを巡るマスク氏の主な動き(写真はAP)
ツイッターを巡るマスク氏の主な動き(写真はAP)
ワールドカップ決勝戦が行われたドーハの競技場に姿を現したイーロン・マスク氏(奥中央)=18日(ゲッティ=共同)
ツイッターを巡るマスク氏の主な動き(写真はAP)


迷走
 アルゼンチンの36年ぶりの優勝に沸いたサッカー・ワールドカップ(W杯)決勝。マスク氏はドーハの競技場で熱戦を見届けた。ツイッター利用者に辞任の是非を問う投票を始めたのは、その数時間後だった。
 マスク氏のプライベートジェット機の動きを追跡するツイッターのアカウントを「位置情報を知らせることは危険を伴う」として凍結。だが世界中が注目する舞台に姿を見せて居場所をさらしたことに、「言行不一致」との受け止めも。
 今年4月にツイッター買収の合意が発表された後、7月には買収撤回を表明。ツイッターから契約履行を求め提訴されると、10月には買収を再提案したことを明らかに。マスク氏の迷走は当初から垣間見えていた。

解雇
 1日当たりの利用者が世界で2億人を超える巨大交流サイト(SNS)。影響力は大きいだけに、偽情報の監視をはじめ運営の負担は大きいはずだが、マスク氏は唯一の取締役として全権を掌握。世界で約7500人だった従業員の3分の2を解雇した。
 自らを「言論の自由の絶対主義者」と称し、トランプ氏のアカウントも、投票で賛成が過半数だったとして復活させた。昨年1月の米議会襲撃事件を受け、暴力を扇動する懸念があるとして旧経営陣が永久凍結していた。マスク氏は「人々の声が神の声」というラテン語の表現を用いたが、重要な経営判断も根拠の薄い見せかけの「民意」に依存している。

圧力
 マスク流の経営にツイッターの広告主は離反。「時代の寵児」としてもてはやされるきっかけともなった電気自動車(EV)事業にも打撃が生じている。マスク氏がCEOを務めるテスラの株価は年初来で50%超下落した。ツイッター経営に時間を割き過ぎることや、ツイッター混乱に伴うテスラのイメージ悪化も要因とされ、テスラ株主からマスク氏への圧力も強まっている。
 マスク氏はツイッター買収直後に「このままでは倒産の可能性がある」と社員集会で述べ、低収益な経営に危機感を募らせてきた。成長が困難な企業を買収して、やりたかったことは何なのか。真意は見えてこない。(ニューヨーク共同=隈本友祐)

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