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リーガルテックに波紋 AI契約書審査は違法? 国が見解、業界は適法訴え【大型サイド】

 人工知能(AI)を使って企業が交わす契約書の法律上の問題点を審査するデジタル技術「リーガルテック」が違法かどうか、波紋が広がっている。弁護士資格を持たない者が報酬をもらって法律事件を扱うことを禁じる弁護士法に違反する可能性があるとの見解を、国が示したためだ。

AIによる審査を受けた契約書のサンプル画面(リーガルオンテクノロジーズ提供)
AIによる審査を受けた契約書のサンプル画面(リーガルオンテクノロジーズ提供)
AIが契約書を審査するサービスのイメージ
AIが契約書を審査するサービスのイメージ
AIによる審査を受けた契約書のサンプル画面(リーガルオンテクノロジーズ提供)
AIが契約書を審査するサービスのイメージ

 リーガルテックは、企業の法務部門の業務効率化につながるとして活用が進み、大手3社は自主規制団体をつくって適法性を主張し、サービスの継続を訴えている。
 リーガルテックは法律(リーガル)と技術(テクノロジー)を組み合わせた造語。業務委託や秘密保持などの契約書の文面をAIが審査し、条文の抜け落ちを洗い出し、法的なリスクを指摘する。
 例えば、業務委託契約では「委託先に提供した資料の複製を禁止する」条文を入れるのが一般的だ。秘密保持契約だと「契約期間が終わると、秘密情報を返還したり破棄したりする」条文が必要なことが多い。契約に応じて条文の抜け落ちがないかどうかを調べる。
 これまでは弁護士や法務部門の担当者が契約書の条文を一つ一つ審査していたが、ここ数年リーガルテックが普及。リーガルオンテクノロジーズ(旧リーガルフォース、東京)、リセ(同)、「GVA TECH」(ジーヴァテック、同)の大手3社の契約社数は計4千社超となっている。
 弁護士法との関係に注目が集まったのは今年6月だ。新ビジネスが適法かどうかを国に事前照会できる「グレーゾーン解消制度」により、ある企業がリーガルテックの適法性を照会した。弁護士法72条は弁護士や弁護士法人でない者が報酬を得て法律事務に携わる「非弁護士活動」を禁じており、罰則(2年以下の懲役か300万円以下の罰金)が設けられている。
 国は照会に対し、リーガルテックについて「違反すると評価される可能性がある」と回答。契約書が自社にとって法的に有利であるか不利であるかを指摘したり、法的なリスクを数値化したものを表示したりすることは「法律上の専門知識に基づいて法律的見解を述べるものに当たり得る」とし、非弁護士活動と見なされる可能性があるとした。10月には同様の照会があり、国は「個別具体的な事情によっては、違反すると評価される可能性があることを否定できない」などと回答した。
 リーガルテック大手3社と企業の法務部門向けAIシステムを手がけるMNTSQ(モンテスキュー、東京)などは自主規制団体「AI・契約レビューテクノロジー協会」を9月に設立。国によるグレーゾーン解消制度の回答は「質問のあった新規事業への個別判断で、既存サービスの違法性を判断するものではない」としているが、AI・契約レビューテクノロジー協会は、法務省とガイドライン作成で協力する構えだ。
 小島国際法律事務所の出井直樹弁護士は「さまざまな法律文書を処理する中で、人間よりも高精度でチェックできるAIの活用は不可避だ。健全な発展のため、リーガルテックサービスを評価する専門家の存在も必要になるかもしれない」と述べ、AIシステムの構築や運用には弁護士の積極的な関与が欠かせないと指摘している。

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