女性首長アンケート 実績積んでもなお偏見 「リーダー向かず」批判も
女性の政治参画の現状を尋ねる共同通信のアンケートでは、多くの女性首長が立候補する際や就任後に、ジェンダーバイアス(性別に基づく偏見)やセクハラを乗り越えなければならなかった実態が明らかになった。自由記述や個別取材では、既に議員として実績を積んでいるにもかかわらず「リーダーに向かない」などと批判された経験も聞かれた。
小娘
「一部の有権者に『女に何ができる』『39歳の小娘』と言われた。議員の時に期待してくれていても、いざ首長となると違った」。三重県鈴鹿市の末松則子市長(52)は県議時代と比べた「空気」の変化を振り返る。
県議選鈴鹿市選挙区で2期連続トップ当選し実績を重ね、「市民の理解を得た」と39歳で市長選挑戦を決意、2011年に40歳で初当選した。
だが就任後は政策に関係のないさまざまな注文を受けた。言葉の言い回しや口紅の色、アクセサリーの種類…。お辞儀をした際、ジャケットの背中の裾から、中に着たブラウスが少し見えただけで「はしたない」と言われたことも。「うちの市長は女性で良かったんだろうか、と心配になったんでしょうね」。あらゆる注文に丁寧に応じ続けていると、2期目を過ぎた頃から“指摘”はやんだ。
障壁
女性地方議員を支援する「Stand by Women(スタンド・バイ・ウィメン)」の浜田真里代表(35)が多くの地方議員や首長経験者らを対象に行った聞き取り調査では、「有力者の愛人」といった怪文書、オンライン上での誹謗中傷など、女性のほうが攻撃を受けやすいことが分かったという。
愛知県尾張旭市議を4期目まで務め、19年の同市長選に挑戦、僅差で敗れた大島もえさん(46)も「市長選で経験した批判や偏見の方が苛烈。女性だからという理由のものも多かった」と話す。
「議員なら応援するけど、市長ならできない」「子どもがいるのに務まるのか」。出馬表明後、自らに向けられた言葉だ。発言の主は男性だけでなく、高齢女性も大勢いた。
議員選挙より強くなる逆風に、浜田さんは「首長への挑戦を諦めている人も大勢いるだろう」とみる。
リーダー
現在、大島さんは学生や子育て中の女性ら幅広い層を対象に、選挙や社会の仕組み、議員の仕事について伝える活動に取り組む。「女性がリーダーになることを受け入れられない土壌がまだまだある。そこを変えないと、いつまでたっても議員はもちろん、首長にも女性は増えないと思う」
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