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国際賢人会議 自国正当化、のぞく分断 G7広島サミットに課題

 核軍縮推進のため専門家が議論する「国際賢人会議」の初会合が10、11両日、広島市であった。ロシアや中国の委員からは、自国の立場を正当化し、核を巡る日本の「矛盾」を突く指摘があり、国家間の分断が垣間見える会議となった。岸田文雄首相が軍縮機運の高まりを狙う来年の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に向け、課題を残した。

国際賢人会議で発言する中国の趙通氏=10日、広島市
国際賢人会議で発言する中国の趙通氏=10日、広島市
「国際賢人会議」の閉会セッション=11日、広島市
「国際賢人会議」の閉会セッション=11日、広島市
国際賢人会議で発言するロシアのアントン・フロプコフ氏=10日、広島市
国際賢人会議で発言するロシアのアントン・フロプコフ氏=10日、広島市
国際賢人会議で発言する中国の趙通氏=10日、広島市
「国際賢人会議」の閉会セッション=11日、広島市
国際賢人会議で発言するロシアのアントン・フロプコフ氏=10日、広島市

 「立場を離れて自由に議論し、会議の意義を体現できた」。軍縮を「ライフワーク」とする岸田氏は11日の会合でこう述べた。会合後、自身の地元で開かれるサミットでの「議論の充実につなげていきたい」と語った。
 賢人会議は日本のほか、核兵器を保有する米中ロや非保有国の専門家ら計15人の委員で構成。政府の事情にとらわれず討議することが目的で、政府代表としてではなく個人としての参加だ。
 だが会合では食い違いも目立った。10日の公開会合で、ウクライナに侵攻するロシアの核による威嚇を「断じて受け入れることはできない」とした岸田氏らのメッセージに対し、委員のロシア・エネルギー安全保障研究センター所長、アントン・フロプコフ氏は「正しくない」と反発した。
 ある委員は、反論しなければロシア政府から責任を問われかねないとして、公開の場で「『公式見解』を言わざるを得ない」と理解を示す。だが関係者によると、非公開会合でもロシアは「核のどう喝」をしていないとの意見が出たという。フロプコフ氏の発言だった可能性がある。
 8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議が前回に続き決裂したように、核兵器を巡る各国の利害は複雑に絡み合う。賢人会議は2026年の次回NPT再検討会議に向け成果文書をまとめる方針だが、意見の一致は困難を伴いそうだ。
 日本政府は、被爆者らが求める核兵器禁止条約への参加を否定した上で、軍縮のための「現実的かつ実践的な取り組み」を追求するとし、保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任する。
 委員の一人で中国の専門家、米カーネギー国際平和財団の趙通シニアフェローは非政府組織(NGO)などとの公開会合で、軍縮には国としての「まとまった声」が必要と強調し、日本国内の「溝」が障害だと指摘。唯一の戦争被爆国として核廃絶を掲げる一方、米国の核の傘の下にいるという矛盾を抱えた日本が「橋渡し」をするのは難しいとの考えをにじませた。(共同=井上浩志)

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