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品川区長再選挙 民意どう反映 識者「議論が必要」

 東京都品川区長選の再選挙は無所属新人の元都議森沢恭子氏(44)が当選し、約2カ月ぶりにトップ不在が解消された。初の再々選挙は回避されたが、現行制度では、法定得票数(有効投票総数の4分の1)に達する候補者が出るまで選挙が繰り返される。民主主義の根幹である選挙制度で民意をどう反映するのか。識者は議論の必要性を指摘する。

東京都品川区長選で当選が決まり、あいさつする森沢恭子氏=4日、品川区
東京都品川区長選で当選が決まり、あいさつする森沢恭子氏=4日、品川区
法定得票数に届かず、再選挙となった首長選
法定得票数に届かず、再選挙となった首長選
東京都品川区長選で当選が決まり、あいさつする森沢恭子氏=4日、品川区
法定得票数に届かず、再選挙となった首長選

 開票所となった区立総合体育館。4日深夜、当選者が決まると、区選挙管理委員会の鈴木誠事務局長は安堵の表情を浮かべた。再々選挙となれば、4月の統一地方選の準備にも影響が出かねなかったといい「何より区民への負担が大きい。正直ほっとした」。
 再選挙は、再挑戦となる5人と新たな立候補者1人が出馬し、1回目と同じ6人の争いとなった。4期16年務め、任期満了で勇退した浜野健前区長の後継指名はなく、争点は同区上空を通る羽田空港着陸機の新ルートの是非など。各陣営は他候補との違いを出そうと苦心したが有権者の関心は高まらず、投票率は32・44%で1回目の35・22%を下回った。
 当選した森沢氏は、事務所で「投票率を上げようと努力したが難しかった。(有権者から)なぜ再選挙なのかという声もあった」と語った。
 総務省によると、法定得票数割れによる首長選の再選挙は品川区長選で7例目。過去6例は、再選挙で立候補者が4人以下に減っていた。
 公選法には1952年まで、得票上位者による決選投票の規定があった。過去に規定の復活が議論されたこともあったが、決選投票がなければ首長が決まらないケースは極めてまれだとして、実現しなかった。
 地方選挙に詳しい慶応大の築山宏樹准教授(政治学)は、現状の制度を「再選挙への立候補に要件を設けず、再々選挙の回避を候補者や有権者の自助努力に任せているのは問題がある」と指摘。首長不在が長引けば、新規予算や独自政策が打ち出せないなど行政の停滞を招きかねないとして「決選投票導入を含む制度改正を議論してもよいのでは」と話す。
 一方「再々選挙も首長を選ぶための重要なプロセス。制度改正は慎重に考える必要がある」と話すのは、東京大の谷口将紀教授(政治学)。「再選挙になったということは、候補者に決め手がなかったということ。新たな候補者が参入する可能性を残しておいた方がいい」と指摘する。その上で、トップ不在の期間を短くするためには、法定得票数の引き下げや再選挙までの選挙活動期間の短縮など、他の方法も検討すべきだとした。

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