「大型サイド」新型コロナ法的位置付け インフル同等?5類も視野 見直し議論、合意形成課題

 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の法的位置付けを見直す議論を始めた。背景には治療法とワクチンの普及、ウイルスの変異による致死率の低下があり、感染症法の分類を現状より引き下げ、インフルエンザと同等の5類にすることも視野に入れる。新型コロナとの共生を見据え「見直しは必須」との声が上がる一方、専門家の間でも考え方に違いがあり、合意形成が課題となる。

新型コロナ対策を議論する専門家組織の会合で資料に目を通す加藤厚労相=11月30日、厚労省
新型コロナ対策を議論する専門家組織の会合で資料に目を通す加藤厚労相=11月30日、厚労省
感染症法上の分類と措置
感染症法上の分類と措置
新型コロナ対策を議論する専門家組織の会合で資料に目を通す加藤厚労相=11月30日、厚労省
感染症法上の分類と措置

 ▽致死率
 「病原性、感染力、変異の可能性をどう評価するか、国民と理解を共有するのが必要だ」。加藤勝信厚労相は11月30日に開かれた専門家組織の会合で、見直しに向け考え方の提示を求めた。
 政府はこれまで、新型コロナの重症化率や致死率をインフルエンザと比較、その評価を軸に措置を緩和してきた。政府資料では、デルタ株による昨年夏の流行「第5波」では60歳以上の致死率は2・5%。一方、今年夏のオミクロン株派生型「BA・5」による第7波では東京のデータで0・64%、大阪のデータで0・48%となり、インフルエンザの0・55%に近い状況だ。
 政府対策分科会の経済系専門家からは、致死率や重症化率に大差はないとして、2類より幅広い措置が取れる「新型インフルエンザ等感染症」となっている現在の位置付けを、5類相当に変えるべきだとの意見が出ていた。厚労省幹部は「直近ではさらにインフルエンザに近づいている可能性がある」と指摘。同程度と判断されれば位置付けは変わる見通しだ。
 ▽自己負担
 5類になると何が変わるのか。感染者に対し外出自粛要請や就業制限、入院勧告がなくなり、入院先は限られた指定の医療機関から一般に広がる。濃厚接触者の特定や、新型コロナ対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言などもできなくなる。
 治療薬や医療費は原則全員公費負担となっているが、自己負担が生じる。ワクチンは予防接種法上、特例臨時接種の対象だが、枠組みが定期接種に変わり自己負担が生じることも想定される。
 厳しい財政事情もある。財務省によると、新型コロナ対応の医療体制への国費支出は主な施策だけで約17兆円に上る。同省は11月、ワクチン接種費用の全額国費負担に「特例的な措置は廃止すべきだ」とした。
 一方、「公費支援や外出自粛をいきなり切るのは厳しいのが実情」(厚労省幹部)で、一定の期間を置いて段階的に対応を変える可能性もある。
 ▽慎重
 医療系の専門家からは5類への移行に慎重な声が上がる。専門家組織のあるメンバーは「いつまでも臨時的な態勢では間に合わない。通常の範囲で対応できる方向に変える必要がある」と強調し、位置付けを整理する必要性を認める。だが「2類か5類かといった短絡的な議論はすべきではない」とくぎを刺す。
 別のメンバーは「ウイルスの今後の変異が読み切れない。新型コロナの流行の影響で(死者数が例年の水準をどれだけ上回ったかを示す)超過死亡も多くなっている」とし、移行は容易ではないとする。脇田隆字座長は「重症化率一点で見るべきではないとの意見も出ている」とした上で、早期に評価を示していく考えだ。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞