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同性婚訴訟 立法必要性、3判決続く 権利拡大も国会議論停滞【表層深層】

 同性婚を認めない諸規定の違憲性が争われた訴訟で、東京地裁判決は30日、家族になる法制度が存在しないことを「人格的生存に対する重大な脅威」と明言した。「違憲」「合憲」と判断が分かれた札幌、大阪両地裁の判決とともに、立法措置の必要性を強調したものだ。自治体レベルでは同性カップルの権利を認める制度が広がるが、自民党内の根強い反発から国会の議論は停滞したまま。識者は「効果に限界がある」として婚姻制度の見直しを求める。

自民党本部で開かれたLGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を協議する会合=2021年5月、東京・永田町
自民党本部で開かれたLGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を協議する会合=2021年5月、東京・永田町
同性婚を巡る訴訟の判決後、記者会見する原告の小川葉子さん(左から2人目)ら=11月30日午後、東京都港区
同性婚を巡る訴訟の判決後、記者会見する原告の小川葉子さん(左から2人目)ら=11月30日午後、東京都港区
同性婚を巡る訴訟の判決後、取材に応じる原告の小川葉子さん(右から2人目)ら=11月30日午後、東京地裁前
同性婚を巡る訴訟の判決後、取材に応じる原告の小川葉子さん(右から2人目)ら=11月30日午後、東京地裁前
自民党本部で開かれたLGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を協議する会合=2021年5月、東京・永田町
同性婚を巡る訴訟の判決後、記者会見する原告の小川葉子さん(左から2人目)ら=11月30日午後、東京都港区
同性婚を巡る訴訟の判決後、取材に応じる原告の小川葉子さん(右から2人目)ら=11月30日午後、東京地裁前

ボール
 「立法府に働きかけていく一歩を踏み出す勇気をもらえた」。東京地裁判決後、原告の小川葉子さん=50代、東京都=は記者会見で今後に向けた決意を語った。
 判決では同性カップルが家族になるための法制度がないことについて「個人の尊厳に照らして合理的な理由があるとは言えない」と批判。異性婚との比較では札幌地裁判決が「生まれながらに持っている法的利益に差異はない」、大阪地裁判決は「望み通りに同性と婚姻できないという重大な影響が生じている」とし、3判決は国会にボールを投げた形だ。
 会見に同席した同性婚実現を目指す「マリッジ・フォー・オール・ジャパン」(東京)の寺原真希子代表理事は「国会は法改正のために動く義務がある」と訴えた。
家族観
 だが国会の動きは鈍い。自民党は2016年、性的少数者の権利拡充などを検討する特命委員会を設置。議論を重ね、性的少数者に関する「理解増進法案」を国会に提出しようとしたが、昨年5月に事実上見送られた。
 当時特命委委員長として旗振り役だった自民党の稲田朋美元防衛相は、背景に「性的少数者について法律化すること自体がけしからんという考えがあった」と振り返る。直後の衆院選では自身も、伝統的な家族観を重視する保守層からバッシングを受けたという。
 立憲民主党など野党3党は19年6月、同性婚実現のための民法改正案を衆院に提出したが、一度も審議されず廃案に。岸田文雄首相は今年10月、衆院本会議で同性婚について「わが国の家族の在り方の根幹に関わる問題で極めて慎重な検討を要する」と従来の政府答弁を踏襲するだけだった。
安定
 国会とは裏腹に、同性カップルへの世論の理解や自治体の権利拡充策が先行している。広島修道大の河口和也教授らが20年11月に公表した国の科学研究費助成による「性的マイノリティーについての意識」全国調査では、同性婚に「やや賛成」「賛成」の合計は15年の51・2%から19年は64・8%に増えた。
 同性カップルを婚姻に相当する関係と認める「パートナーシップ制度」は全国200超の自治体が導入している。ただ公営住宅の入居や相手の手術への同意が可能となるケースがある一方、相続や配偶者控除などの法的権利は認められず、同性婚訴訟の原告らは「安定した家族生活には不十分」と語る。
 東京都立大の木村草太教授(憲法)は3判決について「同性カップルの法的保護のための立法措置を国会に求めており、進まない議論へのプレッシャーになり得る」と指摘。「自治体の制度は法的効果がなく、異性婚と分離して別制度を設けるのは差別的と言える。婚姻制度に同性カップルを包摂する法改正が必要だ」と話した。

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