どう見る?菅政権 実績評価も路線継承に懸念【NEXT特捜隊】

 菅義偉内閣が16日発足した。7年8カ月の安倍晋三政権からバトンを引き継いだ新政権にどのような視線が向けられているのか。NEXT特捜隊がLINEで尋ねたところ、安倍政権を支え続けた菅新首相の実績や経験豊富な閣僚で固めた安定感から期待する人が目立った一方で、前政権の「負の側面」も継承するのではと懸念を示す声も多く寄せられた。当面は新型コロナを巡る課題に新政権がどう対応するかに注目が集まっている。

初閣議に臨む菅義偉首相(中央)と閣僚=16日、首相官邸
初閣議に臨む菅義偉首相(中央)と閣僚=16日、首相官邸
初閣議に臨む菅義偉首相(中央)と閣僚=16日、首相官邸

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 ■期待度 実務能力高く/前政権への拒否反応も
 菅義偉首相への期待についての問いには、官房長官として屋台骨を担った安倍政権に対する評価が反映される結果となった。豊富な実務経験から実行力を評価する意見が並ぶ一方で、森友、加計学園問題をうやむやにしたままの前政権の路線継承として拒否反応を示す声も多く寄せられた。
 「8年近くの官房長官の実績があるから期待できる」(10代男性公務員、富士市)、「規制改革の実務経験があるので、その手腕に期待したい」(70代男性、掛川市)。7年8カ月にわたり政権を支え続けた実務能力を買う意見は多い。
 秋田県の農家に生まれた「非世襲」の菅首相。菊川市の60代女性は「庶民の気持ちが分かる政治家」と好感を抱く。静岡市葵区の60代女性会社員は「携帯電話料金の引き下げなど国民生活関連の課題解決について前政権よりすぐに実行してくれそう」と生活者視点の政治に期待を寄せる。一方で「元気さ、明るさ、カリスマ性がほしい」(60代女性会社員、掛川市)「外交は不安」(50代女性公務員、富士市)との指摘もあった。
 前政権を評価しない人にとって、路線継承を掲げる首相の姿勢は不満のようだ。県外在住の60代女性は「信頼できなかった安倍首相の政治を引き継ぐので信用できない」と突き放す。静岡市葵区の40代女性自営業は「大きすぎる負の要素を省みる様子がみじんもない」と手厳しい。沼津市の70代男性は「前政権を反面教師にしてほしい」と訴える。

 ■首相イメージ たたき上げ、苦労人
 「たたき上げ」「真面目」「苦労人」―。菅義偉首相のイメージにはこんな言葉が並んだ。自民党総裁選では「雪深い秋田の農家の長男に生まれ…」と、田舎育ちのエピソードを繰り返し語った菅首相。こうした印象が定着していることをうかがわせた。一方で「裏表がありそう」といった否定的な見方もあった。
 浜松市南区の30代自営業男性は「たたき上げで庶民的」と感じている。静岡市駿河区の40代男性会社員も「仕事には厳しそうだが、人情はある」。「温和で優しそうだが、やるときはビシッと決める」(10代以下男子学生、浜松市東区)と期待した。
 官房長官時代は冷静な受け答えで記者団と対峙(たいじ)した。「目の向こうに怖さ」(40代男性会社員、静岡市葵区)、「裏ボス」(20代男子学生、県外在住)と冷徹さを感じる面もあるようだ。
 森友、加計学園、桜を見る会を巡る問題などを念頭に「隠し事を平気でとぼける」(60代男性公務員、静岡市清水区)など、安倍政権の負のイメージも引き継いでいる。
 菅首相の自民党総裁任期は来年9月末まで。静岡市清水区の50代男性会社員は「中継ぎはうまくやるが、将来を期待するのは難しい」と手厳しい。

 ■政策 コロナ解決求む/システム改革に手腕を
 菅内閣に取り組んでほしい政策課題として挙がった大半が新型コロナ対策。減収世帯への支援、検査の拡充、感染者への差別撤廃などを求めた。デジタル化をはじめとするシステム改革に手腕を発揮してほしいとの声も多かった。
 浜松市中区の60代主婦は「まずは新型コロナを何とかして、経済を上向かせてほしい」と訴える。PCR検査拡充を求める意見が多く、静岡市葵区の40代女性自営業は「冬場に備えて本気で取り組むべき」と指摘した。
 「営業自粛した店舗への手厚い対応」(40代女性会社員、県外在住)、「減収世帯への支援」(50代女性、静岡市葵区)と経済対策に注力を求める声や、コロナ禍が長引くことを想定し「東京五輪の中止を」(50代男性公務員、沼津市)と決断を迫る意見も届いた。
 デジタル化促進のため、新設に動きだした「デジタル庁」。静岡市駿河区の40代主婦は「古い殻を破るべく機能させてほしい」と注目する。磐田市の70代主婦は「インターネット投票ができるようになれば」とも。静岡市清水区の50代男性会社員は「行政と社会の構造転換を果たしてほしい」と期待する。
 「厚生労働省と文部科学省の垣根を外してこども園化の促進を」(50代主婦、湖西市)、「マイナンバーカードに徴税情報をひも付けて、脱税防止を図る」(40代男性会社員、県外在住)、「国民投票で首相を選びたい」(60代女性会社員、静岡市葵区)と現状のシステムの刷新を求める声が多く寄せられた。

 ■注目閣僚 「ド直球」河野行革相に好感
 注目する閣僚について尋ねると、河野太郎行政改革担当相や上川陽子法相(衆院静岡1区)、加藤勝信官房長官ら、経験豊富な閣僚の名前が挙がった。
 河野氏は就任時、閣僚が深夜未明まで首相官邸で順に記者会見するのを「前例主義の最たるもの」と批判。会見を見た浜松市浜北区の20代男子学生は「物おじしないド直球な言葉は、最近の政治家にない」と好意的だ。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」導入撤回の決断や、ツイッターの発言から「物事の判断がはっきりして、忖度(そんたく)しない」(50代女性公務員、富士市)、「SNSで国民の声を拾ってくれそう」(50代主婦、静岡市葵区)との声もあった。
 3度目の法相に就任した上川氏。「地元選出で同じ年齢なので親近感がある」(60代主婦、静岡市葵区)、「現実的で良識がある」(60代主婦、富士宮市)など、静岡市在住者や女性から高い支持を得た。「しっかり役割を果たしている」(50代自営業男性、吉田町)と実務能力も評価された。
 加藤氏は「新型コロナウイルス対策を頑張ってくれた」(60代女性、菊川市)。平井卓也デジタル改革担当相には、三島市の60代アルバイト女性が「世界との遅れを取り戻してほしい」と注文した。
 一方、「期待できる大臣はいない」との回答も多かった。「代わり映えしない」(30代主婦、富士市)、「第5次安倍内閣みたい。もっと若手を起用すべき」(40代主婦、静岡市葵区)、「都合の悪いことにふたをして、掘り起こさせないことが目的」(40代自営業女性、静岡市葵区)との指摘もあった。

 ◇アンケートは9月16~19日に実施し、212人から回答を得ました。ご協力ありがとうございました。(TEAM NEXT編集委員 福田雄一、小泉直樹)

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