自転車 路面の通行帯「矢羽根」に困惑【NEXT特捜隊】

 「自転車用の路面標示があるのに道が狭くて、何度も怖い目に遭っています」

矢羽根標示の上を走ることができない自転車=18日正午ごろ、静岡市駿河区(写真の一部を加工しています)
矢羽根標示の上を走ることができない自転車=18日正午ごろ、静岡市駿河区(写真の一部を加工しています)
静岡市の自転車用通行帯の標示例
静岡市の自転車用通行帯の標示例
矢羽根標示の上を走ることができない自転車=18日正午ごろ、静岡市駿河区(写真の一部を加工しています)
静岡市の自転車用通行帯の標示例


 読者の日常の困り事や疑問に基づいて取材、調査する静岡新聞社「NEXT特捜隊」に、静岡市駿河区の女性(75)から悩みが寄せられた。静岡県内で整備が進む自転車用の通行帯。取材してみると、区分やルールが浸透していない現状が浮かび上がった。
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 女性は自動車の運転免許を持たず、自転車で習い事や買い物に出掛けている。昨年、いつも使う道に自転車の通行位置を示す矢羽根状の路面標示が登場。「段差が多い歩道を通らなくて済む」と安心して通っていたが、車1台が通るのがやっとの道幅の場所にも標示が続く。女性は「後ろから車が来て、慌てて歩道に上がろうとして段差で3回転んだ」と話す。結局、歩道を走ったりしている。

 ■浸透半ば 3種類の自転車用通行帯
 道路を管理する静岡市に聞いてみた。矢羽根標示は「自転車走行空間ネットワーク整備計画」の一環で、生活の足として欠かせない自転車の安全確保のため、自転車の利用が多い市内の道約400キロに通行帯を整備している。その通行帯、実は法定速度や交通量など国の基準に沿って3種類に区分され、ルールも異なる。
 車道や歩道と縁石ではっきり分離した「自転車道」と、車道上で指定される「自転車専用通行帯」は、路面が青色などでベタ塗りされることが多く、道交法で自動車やオートバイの走行が禁止されている。一方、矢羽根標示は車道上で自転車が走行すべき場所を示すのみ。自動車も通行できる。逆走などを防ぐ効果はあるが、あくまで道交法で原則車道を走るとされる自転車の安全走行のため、狭い道にも示される。
 女性の悩みの理由はここにある。話を聞くと、女性は矢羽根標示は自転車だけが通れると思って安心して利用していた。だから、車が標示の上を走ったり、車と自転車が並走できないような狭い道に標示があったりすることに困惑した。道路を利用する全員にルールを浸透させなければ、危険な状況を誘発しかねない。

 ■目配り気配り 自転車も自動車も
 静岡市内の矢羽根標示がある道路を、しばらく観察してみた。車が近づくと標示を外れて避ける自転車が目立った。車が至近距離を追い越し、ヒヤリとする場面も。標示を無視し、広い歩道を並走する自転車もいた。
 車側も危険は同じ。矢羽根標示の道をよく車で通るという駿河区の主婦(34)は「狭い道だと避けることもできず、自転車に合わせてゆっくり進むしかない」とストレスを感じている。
 背景には、自転車専用の通行帯を設置するスペースを確保しづらい道路事情もある。そのため、道交法は13歳未満の子どもと70歳以上の高齢者、身体障害者は歩道を自転車で走行できるよう定め、より安全に移動できるよう配慮している。
 自転車用の通行帯の整備は浜松市や沼津市、富士市など各地で進む。どうすれば安全に利用できるのか。「自転車も自動車もルールを守り、目配りと気配りをして、安全を最優先に行動してほしい」と県警交通企画課の担当者。やはり頼りは、道路を利用する一人一人のマナー、モラルということか。(TEAM NEXT編集委員 小泉直樹)

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