記憶、永遠に(5・完)平和を生きる世代 新たな継承の形を模索

 「フォトジェニック(写真映えする)な展示物を」「背景は青空の映像で」-。島田商業高の生徒が8月上旬、島田市で15日に行われる平和祈念式典で披露する作品制作に取り組んだ。「周りの人たちに感謝する日に」。戦争の記憶から遠く離れた世代が後世につなぐため、向き合い方を模索している。

作品に手を加える杉本彩音さん(左)と竹本小雪さん=8月上旬、島田商業高
作品に手を加える杉本彩音さん(左)と竹本小雪さん=8月上旬、島田商業高

 主体となって進めるのは情報ビジネス科3年の杉本彩音さん(17)と竹本小雪さん(17)の2人。会員制交流サイト(SNS)で写真撮影スポットとして人気を集める羽の壁画アートに着想を得た。式典を主催する市を通じ、市内の小学生が平和へのメッセージを記した750枚余の羽形の紙を集めた。仲間の協力で1枚ずつ台紙に貼り、平和の象徴の白いハトをイメージした大きな両翼に仕上げた。
 1945年7月26日、米軍爆撃機B29によって長崎型原爆の模擬爆弾(通称・パンプキン爆弾)が同市に投下された島田空襲。少なくとも47人が犠牲になった。杉本さんは「私たち世代にとって、戦争は教科書やテレビで見たり聞いたりする話。現実味がない」と率直な思いを口にする。
 作品は2人が考案し、思いを形にした。戦後生まれの世代は、平和を享受する日々が日常。戦争体験者が高齢化し、語り手が減る中、戦争の悲惨さを現実的に捉えるのは難しい。作業を見守る豊島宏教諭(36)は「いかに生徒たちが自分ごととして考えることができるか」と想像を促す。
 同市では2017年から、市内の各高校が式典の催しの一部を担う。19年は島田工業高が島田空襲をテーマにしたドキュメンタリー映像を制作した。市民協働課の担当者は「若い人たちが平和について考える一つの種になれば」と狙いを語る。
 作品は終戦記念日の15日と翌16日、式典会場のプラザおおるりに展示する。来場者に撮影した写真をSNSに投稿してもらい、発信・拡散を期待する。竹本さんはこう訴える。「ただ単に『二度と戦争をしてはいけない』と言うのでなく、周囲への感謝を伝える前向きな気持ちを持ってもらう。そんな日になれば」(社会部・佐藤章弘、白柳一樹が担当しました)

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