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<船長>駿河湾フェリー(静岡市清水区)

(2019/7/29 11:00)
海の様子を確認しながら操船する橋本寛二さん
海の様子を確認しながら操船する橋本寛二さん
トランシーバー
トランシーバー

 走り出すと、富士山や三保の松原、南アルプスが見えてくる。陸上ではない、ここは海上の県道223号。「海外の旅客船の船長たちも魅了される景色だ」。清水港と土肥港を結ぶ駿河湾フェリー「富士」船長、橋本寛二さん(69)が笑顔を見せた。
 駿河湾は大型船が試運転をしに来るほどの「走りやすい場所」という。しかし、清水港は外国船などが常時出入りできる港則法上の「特定港」で、近年は港周辺でウインドサーフィンやスタンドアップパドルボード(SUP)などのマリンレジャーも盛ん。「湾に出るまでは細心の注意を払わなければいけない」。土肥港は山からの風が手ごわい。離着岸は、この道約50年の腕が試される場面だ。
 海のない奈良県出身。当時船乗りは花形職業とされ、漠然と憧れを抱いた。三重県立大(現三重大)の漁業学科に進学。反捕鯨運動の高まりによって就職が難航する中で、自動車の普及に伴い需要が増していたのがフェリーだった。これまでに貝塚(大阪府)と宮崎間の「フェリーひむか」や川崎と宮崎間の「パシフィックエキスプレス」など、全長200メートル近い大型フェリーの運航に携わった。
 「安全だからこそ“非日常”が味わえる」と強調する。下積み時代、貨物船からフェリーに移った船長の下で働いた。重視されたのは、客の快適さよりも速さ。「他に助けが求められない船で、一番大切なことは何か」。自問しながら、技術を研究した。「揺らさない」という答えにたどり着いた。
 駿河湾フェリーで4年目の夏。この時期は、家族連れが楽しそうに乗船する様子を見ると気が引き締まるという。波を受ける角度を予測して航路を選び、二つのプロペラを巧みに動かして静かに出港した。「今日は波が少し高いですが、万全を期して運航します」。アナウンスするまなざしに力がこもった。

 ■コレがなくっちゃ
 トランシーバー
 進路確認など他船との連絡に使う。特に、フェリーの波が影響してしまう小型船の出入りも多い清水港周辺では、交信が欠かせない。

 ■ドンナトコ コンナトコ
 6月から、県と駿河湾沿岸6市町(静岡、伊豆、下田、南伊豆、松崎、西伊豆)でつくる一般社団法人「ふじさん駿河湾フェリー」が運航する。清水-土肥間の片道約30キロを70分で結ぶ。「富士」は全長83メートル、最大搭載旅客数450人。最大積載車両はバス12台と自動車5台、または自動車54台。橋本寛二さんと田尻正人さんの2人が交代で船長を務める。
 船上では各週末に大道芸人らによるアトラクションを実施。8月3~9日に操舵室見学会を行う。

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