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<氷加工販売業>渡辺冷蔵(富士宮市)

(2019/6/17 11:00)
透明度の高い氷の塊をスライサーで切り分けていく渡辺浩正さん
透明度の高い氷の塊をスライサーで切り分けていく渡辺浩正さん
氷ばさみ
氷ばさみ

 富士山本宮浅間大社の西側に位置する富士宮市西町の商店街の近く。200年前からこの地で“氷屋さん”を営む「渡辺冷蔵」の7代目、渡辺浩正さん(43)が、高速回転する氷専用スライサーの円盤状のカッターに高さ1メートルほどの氷塊を押し当てる。「キーン」という鋭い音を立て、持ち運べる大きさにカットされた氷は一見ガラスのオブジェのよう。「不純物を丁寧に取り除きながら48時間以上かけて作られた『純氷』と呼ばれる氷。透明度が高く味もまろやかなのが特徴」。ふわふわ食感が注目される最近のかき氷人気を支えるこだわりの氷だ。
 オン・ザ・ロックや水割りに欠かせない「ぶっかき氷」や3センチ角に切り揃えた「ダイヤアイス」にも加工される純氷は硬くて溶けにくいため「最後まで飲み物本来の味が楽しめる」。客の求めに応じた加工は一人で全て担っている。
 「特に腕が鳴るのはバーからの注文」だ。グラスの径にぴったり合う「丸氷」を自ら作り上げるバーテンダーが削りやすいように、切り込みを入れて納品する。細やかな心遣いは先祖代々受け継いだモットーだ。
 繁忙期が夏場の2~3カ月と短く、天気の急変によるイベント中止で急きょキャンセルを受けることもある厳しい業界。後継者問題や機械の老朽化を機に廃業する氷屋は全国的にも増えているのが現状という。「昭和中期は市内だけで同業が4~5軒あったが、今は富士市と合わせてもうちだけになった」
 氷屋自ら、氷の魅力を伝えていかなければと始めたのが、自社で営む飲食店で提供するかき氷だ。地元グルメの塩ゆで落花生を使った自家製シロップと黒蜜で味わう一品は、甘じょっぱさがくせになり、遠方からも「かき氷マニア」が足を運ぶ。
 ひと昔前と違い、今ではかき氷が一つのスイーツになった。「食べる楽しみ、見る楽しみに加え、人を喜ばせる氷のパフォーマンスも追求していきたい。氷の可能性はまだ広げられる」。曇りのない透明感の向こうに人の笑顔が見たいと思い描く。

 ■コレがなくっちゃ
 氷ばさみ 
 氷を備蓄庫から作業場に運び出す時や、危険な電動スライサーの周辺で安全に氷を移動させる時などに欠かせない。氷の厚さで大小2種類を使い分ける。「物心ついた頃からあった」という年代物だが、災害時の大規模停電や繁忙期など、スピードと手際の良さが求められる時ほど威力を発揮する。

 ■ドンナトコ コンナトコ
 1818(文政元)年に富士宮市西町に創業。2代目が山梨県の毛無山麓の麓地区や鰍沢で仕入れた天然氷を、馬車や舟を使って富士宮に運び、現在地で氷屋を始めた。
 事業を拡大した3代目が材木商や製茶、質屋などに加え、自社での製氷も始めたが、電気冷蔵庫の普及などを背景に祖父にあたる5代目が製氷業から手を引いた。
 現在は氷の加工販売業に主軸を置き、県産茶葉の販売も行う喫茶と居酒屋も経営する。

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