静岡県立大発 まんが しずおかのDNA(30)国際平和とスポーツ 五輪精神の灯 消さない

 国際社会は、紛争や暴力的過激主義、貧困や格差、自然災害など、複雑で相互に関連する国境を越えた課題が山積し、祖国を追われた難民は7950万人に上っている。そこに新型コロナウイルス問題が発生し、さらなる混乱が世界を襲った。

漫画=かとうひな
漫画=かとうひな

 新型コロナの発生前、世界各国で東京五輪に向けた取り組みが加速していた。アフリカのスーダンから半世紀に及ぶ内戦を経て2011年に独立した“世界で最も新しい国”南スーダンもその一つだ。独立後、2度にわたって大統領の座を巡る権力抗争に端を発する紛争が勃発した。和平合意のもと、暫定政権が新しい国家建設を目指しているが、この間の難民は220万人を超えるともいわれ、いまだ治安は安定していない。
 そんな中、南スーダン国民にとっての希望が平和であり、結束である。紛争が絶えない同国で、民族や出身地を超えスポーツを通じて国が一つになるようにとの願いを込め、16年1月、国際協力機構(JICA)支援による独立後初の国民スポーツ大会が開催された。全国から男女約350選手が集まり、8日間にわたってサッカーと陸上競技で熱戦を繰り広げた。選手・観客ともにフェアプレー精神を貫き、大会は無事終了した。
 この大会を同政府は「国民結束の日」と称し、「平和と結束」の象徴とした。その後も毎年1月に「平和と結束」をテーマに開催。出場選手たちは、東京五輪出場を目指して練習に励んでいる。
 東京五輪開催は1年先送りとなった。それでも、南スーダンのようにスポーツを通じ、国民や部族間の結束、そして、世界の平和を願う国は多い。
 その思いは静岡県民も同じであろう。東京五輪では伊豆および県東部の3カ所が自転車の競技会場となっている。さらに、静岡は、サッカー王国や野球王国としても知られるなど、スポーツ先進県である。たとえ来年、五輪が中止となったとしても、平和を望む五輪精神の灯は消してはいけない。(古川光明/国際関係学部教授・アフリカ地域研究)
 ◇--◇--◇
 静岡県立大の執筆陣が文理の枠を超え、漫画を使って静岡のDNA(文化・風土)を科学的に解き明かす(静岡新聞月曜朝刊「科学面」掲載)。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞