静岡県立大発 まんが しずおかのDNA(26)歴史博物館 

 歴史を学べるメディアとして歴史博物館の役割に注目している。日本を代表する歴史博物館は千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館(歴博)である。地方によっては県立や市立の歴史博物館がある。ただ残念なことに、日本には近現代史を正面から扱った歴史博物館はほとんど存在しないし、歴博も現代史展示だけは貧弱である。これは、日本の歴史教育において近現代史に割かれている時間が諸外国と比べて極端に少ない事情と重なっている。

漫画=かとうひな
漫画=かとうひな

 ところで静岡県には他県のような総合歴史博物館がないが、現代史を学べる場所はある。静岡平和資料センターである。元々は静岡空襲の悲惨な経験を伝える市民有志の運動として発足した「静岡平和資料館を作る会」が、市民の体験記や体験画集の出版や事物資料の収集を踏まえて1993年に開設した。2008年以降は静岡市葵区伝馬町の雑居ビルの2階で、毎週金、土、日に来館者を迎えている。
 筆者は毎年ゼミの学生を連れて見学しており、ドイツ空襲との比較など各種企画展の際にも協力している。学生の中にはボランティアで運営に関わった者もいる。ささやかな施設ではあるが、静岡でも現代史が学べる場所があることをぜひ知ってほしい。
 筆者の夢は、東アジア共同歴史博物館を静岡に作ることである。歴史認識問題で対立している東アジアだが、静岡は日韓交流史のシンボルである朝鮮通信使ゆかりの地でもある。ヨーロッパでは第1次、第2次世界大戦そしてホロコーストという現代史の重要なテーマについての「国境を越える歴史博物館」がすでに実現している。これらの博物館を数多く見てきた経験を生かして、ぜひ静岡に「国境を越える」グローカルな歴史博物館を実現したいと考えている。
 そのための第一歩としてひそかに考えているのが、現在駿府城の一角に計画が進行中の歴史文化施設の中に、静岡平和資料センターと協力して実験的な展示スペースを確保することである。 (剣持久木/国際関係学部教授・フランス現代史)

 静岡県立大の執筆陣が文理の枠を超え、漫画を使って静岡のDNA(文化・風土)を科学的に解き明かす(静岡新聞月曜朝刊「科学面」掲載)。

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