静岡県立大発 まんが しずおかのDNA(19)「愛県心」を育む

 社会人生活の大半を県外で過ごしてきた者にとって、静岡県の住み心地の良さは格別である。温暖な気候、食の幸に恵まれ、日々富士山を眺める生活。全国47都道府県全てを訪れたが、本県に勝る地域はない。

漫画=かとうひな
漫画=かとうひな

 昨年4月に県立大に着任後、真っ先に取り組んだのは学生たちと本県の良さを共有することであった。しかしながら、私が接した学生の大半が県内の観光地にほとんど行ったことがないという。観光地に関心がない、行くのが面倒などの理由だ。本県の歴史、地理、自然などについて十分な知識が蓄積されていないため、関心を惹起[じゃっき]できないようだ。
 本県では今後、観光を基幹産業として位置づけていくとの方向性が示されている。ならば、小中学校、高校の各段階で全国に先駆けて観光教育に注力していきたい。通常の授業に加え、大学による小中高への出前授業の積極活用、大学での観光フィールドワークに高校生が参加するなど、小中高と大学との観光教育面での連携により、郷土の成り立ちを多面的にしっかりと教える積極的な取り組みも必要と思われる。
 例えば、伊豆半島は南方から移動してきた島が衝突してできたこと、静岡市は徳川家康による駿府97町の街づくりにより現在の都市基盤ができていること、かつて京の都では浜名湖が琵琶湖と対比して語られ、「近江」の対語として「遠江」という国名がつけられたことなど、県外や海外からの訪問客に本県をアピールする材料には事欠かない。こうした奥の深い本県の成り立ちを大人も子どもも十分認識すれば、本県に対する評価も変わるのではなかろうか。
 新型コロナウイルス感染拡大に伴う「新しい生活様式」への移行は、テレワークや在宅勤務の推奨などにより東京で就職してもそこに住居を構える必要性が低下するだろう。そうした時に本県への定住の一助となるよう、若い世代を中心に、観光教育を通じて、静岡県をもっと知り、「愛県心」を育むためのサポートをしていきたい。 (八木健祥/経営情報学部教授 観光政策論)
 静岡県立大の執筆陣が文理の枠を超え、漫画を使って静岡のDNA(文化・風土)を科学的に解き明かす(静岡新聞月曜朝刊「科学面」掲載)。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞