静岡県立大発 まんが しずおかのDNA(14)災害時支え合う

 1970年以降、東海地震の発生が「明日起きても不思議ではない」と言われる中、静岡県市町はもちろん、地域の防災対策として自治会・町内会が自主防災組織を結成し、災害時に「自分たちの地域は自分たちで守る」ための活動を行っている。本県の自主防災組織結成率は94・4%と、全国平均84・1%を大きく上回っている(19年度「防災白書」)。

漫画・かとうひな
漫画・かとうひな

 しかし、地域住民の連帯意識の低下や、自治会役員の高齢化、なり手不足もあり、自主防災組織が災害に備えて平常時に行う防災訓練の内容がマンネリ化し、参加者も限定的な地域は多い。
 南海トラフ巨大地震は今後30年以内に80%の確率で起こると予測され、台風・風水害が毎年のように全国で大きな被害をもたらすが、被害規模が大きい場合は「公助」が十分に機能するのは難しい。この状況で、自分の身を自分で守る「自助」と地域・近隣同士でお互いに協力し合う「共助」の力が発災初期から求められている。災害時に自主防災組織が機能し、そのための平常時の活動を活性化するためにも、住民一人一人が防災意識を高め、地域で協力し合える防災力の向上が求められている。
 自主防災活動の現状に問題が多い上に「自助」では避難行動が難しく、避難所生活が大変な高齢者や障害者などの要配慮者への対応は地域防災の喫緊の課題である。そこで発想を転換し、防災に特化した体制ではなく、普段から緩やかに住民同士がつながり、保健・福祉の専門職としなやかに支え合える地域での包括的な支援体制づくりからのアプローチが注目されている。
 その一例として、静岡市駿河区の西豊田学区では、住民と福祉専門職や大学教員・学生などが協働し、普段から顔の見える関係を災害時に生かす取り組み「インクルーシブ防災」を展開している。要配慮者の支え合い支援をテーマとする実践的な宿泊型防災訓練およびシンポジウムを継続的に開催し、防災訓練を切り口とした防災に向けた先駆的な地域づくりを進めている。 (江原勝幸 短期大学部准教授、社会福祉学)
 静岡県立大の執筆陣が文理の枠を超え、漫画を使って静岡のDNA(文化・風土)を科学的に解き明かす(静岡新聞月曜朝刊「科学面」掲載)。

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