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静岡県立大発 まんが しずおかのDNA(13)薬草園の未来

 県立大にある薬草園は、県内唯一の薬用植物園であり、国公立大学の中で収録品種数は最上位クラスである。標本園3300平方メートル、栽培圃場[ほじょう]2千平方メートル、温室130平方メートルに約800種の植物を栽培している。薬学部の教育・研究に必要な植物を育て、また市民の生涯教育の場として県立大開設とともに設置された。薬効性・機能性成分が研究される都度、論文投稿に際しその原植物種の薬草園での保存が要求され増えていく。

漫画・かとうひな
漫画・かとうひな

 薬用植物の重要性は論じるまでもない。伝統医薬の本場である中国では薬用植物の研究が盛んである。広西チワン族自治区薬用植物園が有名でギネスブックに登録されている。中医薬を発展させたのが日本の漢方である。漢方では、人をそれぞれ異なる体質の有機体として捉えた上で、患者の個別の状態に対して適切な一剤を与える。そのような医療がやがて健康長寿の基本となると思われるが、そのためにも薬用植物の基礎を学ぶ場をしっかりと整備しておくことが大学の役目である。
 近代の西洋医学においては、薬用植物から抽出した有効成分を化学物質で置き換える傾向が顕著となり、その傾向が今の薬学に根強く残る。単一物質と生薬のような複合物質では、人の体に与える作用が異なる。合成医薬品がたった100年ほどの歴史の中で多数の人々を巻き込む薬害を引き起こしたのに比べると、生薬は4千年余の歴史の中で副作用に対する経験が重ねられ継承されてきた。漢方の所定の用法に従えば事故を起こすことはあり得ないと言われている。
 人は食べることによって活動能力を維持する食の効果を知っている。人は経験を他の人に伝える能力を持つ。その知の蓄積を系統的に伝えるのが大学の役割である。秋には美しく花開く鳥兜[とりかぶと]を俳句に詠み、冬には薬草園で収穫した大きな文旦の酸味を味わいながら、この薬草園に知の殿堂の拠点として活用する道はないだろうかというのが、私にとっての今の大きな課題の一つである。 (尾池和夫 県立大理事長、地球科学)
 静岡県立大の執筆陣が文理の枠を超え、漫画を使って静岡のDNA(文化・風土)を科学的に解き明かす(静岡新聞月曜朝刊「科学面」掲載)。

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