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ウイルスと細菌/静岡県立大・鈴木隆教授【感染症を知る】

(2020/4/9 00:24)
ウイルスと細菌の違い
ウイルスと細菌の違い
ウイルスの増殖様式
ウイルスの増殖様式

 新型コロナウイルスが世界で猛威を振るう中、「感染症」への理解を深める必要性が高まっている。突拍子もないデマや心無い差別が顕在化するのは、現代社会がウイルス由来を含めた感染症そのものについて知識を十分に持ち合わせていないことも一因。静岡県立大の専門家4人へのインタビューを通じて、そのメカニズムや人類との関わりを解き明かし、新型コロナを含む感染症への適切な向き合い方を考える。第1回は薬学部の鈴木隆教授(生化学、ウイルス学)。

 ■そもそも「感染」とは。
 細菌、ウイルス、寄生虫などの異物(病原体)が動物の体に侵入し、とどまって増殖すること。感染で生じた疾病を感染症という。頭痛や悪寒などの症状(自覚症状)や診察・検査によって確かめられる異常(他覚症状)がある場合、症状が現れない場合がある。
 感染しても症状が現れない場合を「不顕性感染」という。例えば風疹ウイルスで1~3割、ポリオウイルスは9割以上が不顕性だ。自分の感染を認識しないまま、他の人に病原体をうつしてしまうことがあり得る。新型コロナでも、この点が問題になっている。

 ■「免疫」とは。
 動物に備わっている生体防御機能の一つで、体の外から入ってきた細菌やウイルスなどの異物を認識して排除する仕組み。(1)異物の特徴に関係なく迅速に働くマクロファージなど、免疫細胞による「自然免疫」(2)侵入してきた異物を記憶し、同じ種類が再度侵入した際に、その性質に適合した抗体やその異物に特異的なリンパ球が排除を行う「獲得免疫」-がある。
 免疫はストレスや睡眠不足、栄養不足などで力が落ちてしまう。免疫が病原体を押さえ込んでいるが排除しきれていない状態を「持続感染」というが、このような場合、一定期間後に免疫が落ちると残っていた病原体の力が勝り増殖する。新型コロナで一度「陰性」が確認されたのに後の検査で「陽性」と判定されるのは、こうしたケースではないか。

 ■感染症の病原体であるウイルスと細菌の違いは。
 細菌の方がウイルスより大きい。ウイルスは数十~数百ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)で、細菌はその10倍以上。遺伝子にも違いがあり、ウイルスはDNA、RNAのどちらかしか持たないのに対し、細菌はどちらも持っている。
 重要なのは増え方。試験管に栄養素を入れた「培地」に細菌を入れると自分で細胞分裂して増えるが、ウイルスはそれができない。ホストとなる宿主細胞が必要。最小限の遺伝子しか持っていないので、宿主細胞の中に入ってその機能を使って自分を増やしている。

 ■治療薬も異なるのか。
 細菌は試験管の中で増やせるので、例えば培地にいろいろなものを入れて増殖を抑制する物質を探すことができる。多くの抗生物質がこのようにして見つかった。
 ウイルスではそうはいかない。ウイルスの増殖を抑えられる物質が見つかっても、その物質により細胞の働きが阻害されると、(人体にとっては)毒性があることになる。このため、抗ウイルス剤を見つけることは難しかった。
 近年は分子生物学の発達でウイルスの構造が明らかになり、抗ウイルス薬の開発も進んでいる。

 ■ウイルスは宿主細胞の中でどう増えるのか。
 細胞膜に吸着し、細胞の中に侵入する。RNAまたはDNAをコピーして、別にタンパク質を合成し、子ウイルスがいくつも組み立てられて細胞から出て行く。この組み立てをアセンブリ(集合)という。
 細胞が工場、ウイルスは設計図を積んだ車だと思ってほしい。車は工場でいったん乗り捨てられ、設計図だけが工場の中に入る。工場の中ではコピー機で設計図の複製がつくられる。また、設計図を基にして工場内にある部品を使い、新しい車がたくさん組み立てられる。それぞれに設計図を乗せて工場から出て行く。これがウイルス増殖の仕組みだ。

 ■感染防止に手洗いやアルコール消毒などが有効な理由は。
 コロナウイルスは「エンベロープ」という主に脂質でできた膜に覆われている。エタノールなどのアルコールは、この膜をばらばらにしてくれる。せっけんによる手洗いも、汚れを洗い流すだけでなくエンベロープを壊す作用がある。せっけんは水になじみやすい「親水性」と、油になじみやすい「親油性」を持つ界面活性剤で、脂質を包み込んで中に閉じ込めるように作用するためだ。
 さまざまなウイルスにオールマイティーで効くのは次亜塩素酸ナトリウムなど塩素系の消毒剤。ただ反応性が強い一方で、安定性に欠ける。長く置くと分解してしまうので、調製後すぐに使うことが重要だ。

 ◇「武漢肺炎」表現 差別を助長
 新型コロナウイルスを巡っては米政権や日本の一部メディアなどに躍る「中国ウイルス」「武漢肺炎」などの表現が問題視されている。
 鈴木教授は2015年5月に世界保健機関(WHO)が発表した、新しい感染症や疾病に地名、人名、動物名を付けないとした指針に抵触すると指摘。「特定の国や人種に対しての差別や偏見を助長する。ある地域に限定された病原体というイメージが固定されるため、公衆衛生の観点からもマイナス面が大きい」と警鐘を鳴らす。

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