県立高から海外大学へ 静岡県教委、国際バカロレア導入に本腰
(2020/12/20 19:00)-
静岡県教委は来年度、海外の大学の入学資格を得られる国際的な教育プログラム「国際バカロレア(IB)」の県立高への導入に向けて基本計画の策定に着手する。IBは語学力だけでなく、思考力の向上にも教育効果が大きいとされ、県教委は5、6年後の導入を視野に入れる。ただ、教員確保や財政負担などクリアしなければならないハードルは多い。
県内の高校では唯一、加藤学園暁秀高(沼津市)が2000年にIB認定校になったが、公立高の認定は実現していない。県は18、19年度に県外のIB認定校に教員を派遣するなど研究を継続し「英語力や論理的思考力を養い、学習指導要領が目指す主体的・対話的で深い学びにも通じる」(県教委の担当者)と導入の効果を確認した。
川勝平太知事は11月の県議会12月定例会での所信表明で「県立高への導入実現に向け、スピード感を持って取り組む」と明言した。
一方、導入に向けた課題としては、IB指導資格を持つ教員の養成、認定を受けるための環境整備や運営にかかる財政負担、新たな教育課程の編成などが挙がる。生徒のニーズの把握なども必要だ。
文部科学省は認定校を18年度までに200校へ増やす目標を掲げていたが、全国的にも導入が進まず、期間を20年度までに修正した。しかし、今年6月末時点での認定も159校にとどまり、目標を22年度までに再修正した。
文科省国際協力室は「委託先のIB教育推進コンソーシアムを通じ、認定拡大に向けて相談や助言にきめ細かく対応する」としている。
■語学力+生徒自ら考え成長 昨年度コース新設、横浜の高校
昨年度にIBコースを新設した神奈川県立横浜国際高校(横浜市南区)では、16~19歳対象のディプロマ・プログラム(DP)で1年生24人、2年生22人が学んでいる。
1年次は学習指導要領が定める履修科目を中心に学習し、2、3年次でIBのカリキュラムに対応したDP科目を本格的に履修する。科目の一部を日本語で行うプログラムを採用し、英語と数学を全て英語で、ほかの教科は日本語で実施している。IBの指導資格を持つ外国人教員1人と日本人の教員約20人が授業や部活動の指導に対応する。
語学力だけでなく、生徒同士が議論し、課題を発見して解決する能力を育むのがIBの特徴。桜田京子校長は「生徒が自ら考えて発表する経験を重ね、成長する」と教育効果の高さを指摘する。生徒の多くは海外の大学に進学して国際的に活躍することを志望しているという。
IB認定校になるための機構の要求は高く、費用負担も大きい。同校では220席のホールやコンピュータールームを備えた3階建ての新棟を約9億円かけて建設した。教員が指導資格を得るためのワークショップの参加料など、人件費の負担も必要になる。
桜田校長は「IBの導入に向けては、行政と教育委員会、学校が連携し、使命感を持って取り組むことが不可欠だ」と強調した。
<メモ>国際バカロレア 国際バカロレア機構(本部・ジュネーブ)が提供する教育プログラム。国際的に活躍する人材の育成に向け国を超えて通用する大学入学資格を与え、進学の道を開くことを目的に設けられた。世界140以上の国・地域で実施され、2018年4月現在の認定校は5119校に上る。3~19歳の年齢に応じて四つのプログラムがある。
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