鈴木修会長 電撃退任の波紋(上) スズキ、俊宏社長「チーム経営」へ EV、トヨタ連携正念場

 スズキの鈴木修会長(91)が6月の株主総会後の会長退任を電撃的に発表した。1978年以来、42年にわたる陣頭指揮でスズキを3兆円企業に育て、県内政財界にも大きな影響をもたらしてきたカリスマ経営者。その退任の余波を探った。

コロナ禍前の決算会見で並んで発言するスズキの鈴木修会長(右)と鈴木俊宏社長=2019年5月、都内
コロナ禍前の決算会見で並んで発言するスズキの鈴木修会長(右)と鈴木俊宏社長=2019年5月、都内

 「今後5カ年の中期経営計画が完成し、会社の将来のめどが付いた」。24日午後、浜松市南区のスズキ本社で開かれた臨時取締役会。参集した役員十数人に、鈴木会長が退任の意向を示した。あまりに突然の表明に、目を丸くする取締役もいたが、会長の強い意思を全員が受け入れた。
 コロナ禍で見通しが立たない中、同社が昨年来、策定を進めた中期経営計画。鈴木会長が特にこだわったのが電動化と品質向上策の二つだった。3日前の21日にも休日返上で役員らと会社に詰め、退任発表前日まで作業を続けた。
 退任の意思を固めたのは今年1月。仲の良い企業人にも胸中を明かさず、24日の電撃発表となった。
 「今考えると、退任の予兆はあった」。長年交流のある経済人の一人はこう明かす。90歳を超えた2020年の後半以降、鈴木会長は心身共に健康ではあったが、長く話している時に言葉が出にくくなるなど「加齢のためとは言え、本人ももどかしそうな時があった」。
 鈴木会長は6月に相談役に就き、就任6年目の長男鈴木俊宏社長(61)が名実共に経営トップに立つ。大胆な戦略と強力なリーダーシップで組織を率いた父に対し「チーム経営」を掲げる俊宏社長に、自動車業界にとって100年に一度の大変革とされる電動化の荒波が待ち受ける。
 24日に公表した新中期経営計画では、5年間で計1兆円に上る巨額の電動化技術の研究開発費を盛り込んだ。だが、電気自動車(EV)の市場投入時期を明記しないなどあいまいさも残した。会長退任の衝撃もあって市場は好感せず、翌25日の同社の株価は終値で164円安となった。
 俊宏社長は19年の東京モーターショーや20年末の新車発表会などで堂々と発言し、社員から「たくましさを増している」との声も聞かれる。一方、工場勤務の中堅社員は「修会長不在で本当に大丈夫なのか。『俊宏社長』のカラーを早く示してほしい」と切望する。
 電動化技術の開発強化で、19年に資本提携したトヨタ自動車との連携促進は加速するとみられる。スズキの動向は、部品製造業など県内の多くの取引先企業の命運を左右する。
 ある取引先の60代の社長は「今後、トヨタのスズキへの影響力が大きくなり、われわれも『トヨタ帝国』に組み込まれはしないか」と不安を漏らす。同時に「1人ではない。みんなでやっていく」と話す俊宏社長の外交力、調整力に強く期待している。

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