静岡県内酒蔵 再び苦境に コロナ禍で業務用低迷、打開策探る 

 新型コロナウイルスの感染拡大が静岡県内の地酒生産に影を落としている。7月中旬以降、大都市圏を中心に再び感染が広まり、飲食店やホテルの営業再開で一時は回復の兆しが見えた日本酒需要も、完全に水を差された。酒造会社は当面の販路開拓に懸命だが、来年以降の酒米生産に影響する可能性も出ている。

さまざまな地酒が並ぶ花の舞酒造の直売所。季節商品を投入するなどして需要喚起を図っている=12日、浜松市浜北区
さまざまな地酒が並ぶ花の舞酒造の直売所。季節商品を投入するなどして需要喚起を図っている=12日、浜松市浜北区
静岡県内の清酒出荷数量
静岡県内の清酒出荷数量
さまざまな地酒が並ぶ花の舞酒造の直売所。季節商品を投入するなどして需要喚起を図っている=12日、浜松市浜北区
静岡県内の清酒出荷数量

 「飲食店など特に業務用の影響が大きい。緊急事態宣言が出ていた4、5月ほどではないが、回復のいきおいは止まった」。花の舞酒造(浜松市浜北区)の高田謙之丞社長は危機感をあらわにした。
 日本酒造組合中央会(東京)によると、今年1~6月の県内清酒出荷量(概算)は前年同期より27・6%減った。特に営業自粛が広がった4月は47・9%減、5月は54・3%減と大きく落ち込んだ。6月は15・8%減とやや盛り返したものの、7月中旬以降、宴会需要などが再び低迷している。
 花の舞酒造は通信販売の強化など「家飲み・家庭向け需要」の掘り起こしに努めるが、業務用の落ち込み分をカバーするのは難しいという。初の夏限定酒に続き、今月15日に秋限定酒を発売した。高田社長は「季節商品の投入で需要を喚起したい」と話す。
 県内の27社でつくる県酒造組合の望月正隆理事長(神沢川酒造場社長、静岡市清水区)は「今年は東京五輪・パラリンピックの特需が期待されていたが、新型コロナで真逆の状態になってしまった」と肩を落とす。蔵開きや試飲会、商談会などは軒並み中止になり、イベントは現在も開催困難な状況が続く。観光客の土産需要と、海外での日本食ブームに乗っていた輸出も大幅に減少した。
 望月理事長は「静岡の地酒を知ってもらう機会がなくなった。ビデオ会議などを活用して、今までと違う方法でアピールしたい」と打開策を模索する。
 
 ■酒米の減産懸念
 日本酒の需要減で、原料の酒米への影響が懸念されている。酒造会社と農家の契約栽培が主流の酒米は、前年に生産量を決める。このため、「今年の作付面積は例年通り」(JA静岡経済連)という。各地の蔵元は例年とあまり変わらない量の酒米を仕入れ、秋から新酒造りを始めることになる。だが、このまま市場低迷が続けば生産量も減り、全国的に酒米が余る事態が予想される。
 県内の酒米生産量は年約650トン。高級品種の「山田錦」とブランド米の「誉富士」が主要銘柄。経済連によると、12月ごろに酒造会社との調整で翌年の生産計画を決め、各農家に割り振っているという。来年は全国的に減産になる可能性が高く、一部で主食用米や飼料用米への転換などを余儀なくされる可能性が出ている。

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