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「余裕がない」BCP、感染症の備え手薄 静岡県内中小企業

(2020/4/6 07:50)
BCPを見返し、非常時の対応を話し合う橋本秀比呂社長(右)=3月下旬、浜松市南区の橋本螺子
BCPを見返し、非常時の対応を話し合う橋本秀比呂社長(右)=3月下旬、浜松市南区の橋本螺子

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、非常時の行動指針をまとめた事業継続計画(BCP)の重要性が再認識される中で、静岡県内中小企業の対応が遅れている。生産停止や休業が広がれば国内外のサプライチェーン(部品の調達・供給網)に影響を及ぼしかねないが、業績悪化に直面する企業からは「策定する余裕がない」と戸惑いの声も上がる。地震や津波といった災害対策が先行し、感染症への備えは道半ばだ。
 2月にBCPを策定した、ねじ製造販売の橋本螺子(浜松市南区)。南海トラフ巨大地震などを想定し、経営上のリスクや社員の安全確保策といった事業継続に必要な課題を洗い出した。
 「事業が止まれば取引先への影響は大きい。責任は重大」と橋本秀比呂社長(66)。新型コロナでは一時的に部品の仕入れが滞ったといい、「計画は作って終わりではない。感染症にも対応した内容にできれば」と語る。
 地震や風水害、停電など企業の事業継続を阻むリスクは多い。BCPは人手が不足した場合でも中核業務を継続することに主眼を置き、策定により企業の危機対応力を高める効果が期待される。
 ただ、感染症に対応したBCPを策定する企業は少ない。浜松商工会議所が実施した調査では策定済みは13・1%にとどまった。新型インフルエンザが流行した2009年には一時的に機運が高まったが、県内金融機関幹部は「災害対策のイメージが強く、感染症をリスクとして捉える企業は少なかった」と自戒を込める。
 新型コロナは県内の経済活動にも大打撃を及ぼし、幅広い業種で業績悪化のリスクがくすぶる。県中部の自動車関連企業は「先行きが見えず、経営面の不安が大きい中でBCPまではとても手が回らない」と打ち明ける。
 静岡経済研究所の恒友仁理事は「グローバル化が進み、サプライチェーンに組み込まれる中小企業は多い。今回の経験を踏まえ、事業継続のための行動マニュアルを作っておくことが必要だ」と話す。

 ■高まる関心、静岡県「今後も策定後押し」
 静岡県が県内中小企業を対象に実施したBCP策定状況に関するアンケートによると、策定率は43・1%で、2年前の前回調査から2・2ポイント上昇した。比較的、規模の大きい従業員50人以上は55・4%だったのに対し、49人以下は28・9%にとどまった。
 昨年11月から今年1月に実施し、千社のうち534社が回答した。策定予定がない企業に理由を尋ねたところ、「ノウハウ・スキルがない」が47・4%で最も多く、「人手を確保できない」38・0%、「法令・規則で義務付けがないため」29・9%が続いた。
 県は県中小企業団体中央会と連携し、業種別組合に専門家を派遣するなど中小企業の策定を後押ししている。高橋良和商工振興課長は「新型コロナの感染拡大でBCPへの関心は高まっている。今後も策定支援の取り組みを加速させる」と話す。

 <メモ>事業継続計画 大規模災害などの非常時に備え、企業や行政機関が業務を継続したり、早期復旧したりする手順をまとめた計画。ビジネス・コンティニュイティー・プランの頭文字からBCPと呼ばれる。事前の準備や発生当初の連絡手段の確保、システムのバックアップ、設備が被害を受けた場合の対策などについて定める。

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