声優・東山奈央さんに聞く「ゆるキャン△ SEASON2」 リン「ならではの温度感」人間らしく

 キャンプが好きな女子高校生5人の日常を描いたアニメ作品「ゆるキャン△」の続編となる「ゆるキャン△ SEASON2」が、SBSテレビで放送されている。“ソロキャンプ”を好む高校生志摩リンの声を担当する声優東山奈央さんに、山梨、静岡両県の豊かな自然を背景にゆったりしたテンポで進む作品の魅力を語ってもらった。

東山奈央さん
東山奈央さん
「ゆるキャン△」の一場面。富士山麓のキャンプ場で語り合う志摩リン(左)と各務原なでしこ ©あfろ・芳文社/野外活動サークル
「ゆるキャン△」の一場面。富士山麓のキャンプ場で語り合う志摩リン(左)と各務原なでしこ ©あfろ・芳文社/野外活動サークル
東山奈央さん
「ゆるキャン△」の一場面。富士山麓のキャンプ場で語り合う志摩リン(左)と各務原なでしこ ©あfろ・芳文社/野外活動サークル


 出演が決まった直後は、作品のテーマを意外だと思った。
 「キャンプと女子高生が一緒に描かれると聞いて、どういった作品になるのだろうと思いました。キャンプといえば、夏場にみんなでワイワイする印象。でもこの作品は秋冬がメインで、しかもリンは一人でキャンプをしています。それまでの自分の中にはなかった世界でした」
 最初の声の録音時も、どんな完成形になるのか未知数だった。
 「たき火のパチパチという音、木がざわざわ鳴る音をしっかり聞かせるためにせりふの数がとても少なくて、こんなに静かなアフレコでいいんだろうかと。でも仕上がりを見たら、写真かと思うほど(風景を描いた)絵がきれいで。音も臨場感があって、今まさに自分がキャンプ場にいるような気持ちになって驚きました」
 デビュー以後、幾多の作品に出演したが、本作はその中でも異色なトーンという。
 「誰かが死ぬわけでもなく、(主人公が)世界の平和を守るわけでもない。女子高校生たちがお小遣いやバイト代など手の届く範囲内でゆったりキャンプをする。ただそれだけなのに、とても豊かな時間を感じさせてくれる。居心地の良さが最大の魅力だと思います」
 演じている志摩リンも、女子高校生のキャラクターとしてはこれまでになかったタイプ。
 「感情が表に出にくいから、寡黙でクールな印象を持たれがちなんですよね。でもこの作品は『孤独だった少女が仲間との絆を得て成長していく』といった物語ではないんです。(リンにとって)一人の時間も好きだし、みんなといる時間も悪くない、というところに着地します。そこがいいんですよね。リンならではの温度感が、とても人間らしいなと思いました」
 声の演技では精緻な技巧を要した。
 「ぼそぼそしゃべる子なので、ちょっとした抑揚、息や音の違いでセリフの印象がかなり変わるんです。『ちょっと冷たく聞こえたかな』『意図せず温かくなりすぎたかな』など、微妙なさじかげんで聞こえ方が変わってしまいます。すごく集中して演じました」
 こうした緻密さは制作に関わる全員に共通するという。
 「『ゆるキャン△』というタイトルなのに、作品づくりは全然ゆるくないんですよね。スタッフの方々が(モデル地となった)それぞれのキャンプ場へロケハンに行って、肌で感じたことを丁寧に絵や音に落とし込んでいるんです。例えば日が昇って落ちるまでの影の描き方も計算し尽くしているし、音楽もキャンプ場ごとに替えています。こうした作業があるから、見る側はリアルな体験として受け入れられるのだと思います」
 「SEASON2」は、第1作目以上に県内の場面が増えることが期待される。
 「自然の美しさと食べ物のおいしさを描く点は、もちろん前作と変わっていません。温かい食べ物で食欲が刺激されたり。自宅に居ながらにして野山の空気やキャンプの楽しさを感じられます。登場人物5人の関係もゆるゆると変化していきます。ナチュラルな描写を大切にしているので、突然何かが変わるわけではないのですが、『リンがこんなことを言うようになったんだ』と、変化を感じるようなせりふもあるので、楽しみにしていてください」

 とうやま・なお 東京都出身。2010年にアニメ「神のみぞ知るセカイ」中川かのん役でテレビアニメデビュー。「きんいろモザイク」「マクロスΔ」など出演作多数。17年に歌手デビューし、18年2月3日には日本武道館で初のワンマンライブを開催した。

 <メモ>アニメ「ゆるキャン△」 2015年に連載開始し、単行本の売り上げ累計が500万部に達するあfろの漫画「ゆるキャン△」が原作。18年1月放送開始の第1作目は、女子高校生の各務原なでしこが静岡県から山梨県に引っ越し、同級生の志摩リンと出会う場面から始まる。転入した高校の野外活動サークルに所属する大垣千明と犬山あおい、リンの親友・斉藤恵那らとの交流を通じてキャンプの魅力に目覚めていくなでしこの姿を描く。アイリッシュ・トラッドを基調にした耳心地の柔らかい音楽に乗せ、静岡、山梨、長野各県のキャンプ場を舞台に物語が展開される。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞