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伊豆仏像群「火山に起因」 下田の学芸員、論文に新仮説

(2020/12/29 14:40)
南禅寺に伝わる10世紀ごろの菩薩像(左)を説明する田島整さん。災厄を鎮めるために朝廷の一流仏師が制作したとみられる=11月中旬、下田市の上原美術館
南禅寺に伝わる10世紀ごろの菩薩像(左)を説明する田島整さん。災厄を鎮めるために朝廷の一流仏師が制作したとみられる=11月中旬、下田市の上原美術館

 仏教美術を扱う上原美術館(下田市)の主任学芸員田島整さん(50)が、伊豆に伝わる精緻な仏像群の制作は伊豆諸島の火山噴火に起因しているとする論文を発表した。災厄を沈静化しようとした朝廷の対応の一環とする仮説を、歴史資料から組み立てる内容。「年代や作風だけでなく、伊豆の風土が根拠になった。全国にある群像を研究する視点になる」と話す。
 仏像群は、26体と別の像の断片十数点が河津町の南禅寺(なぜんじ)に伝わり、各地に流出した像と合わせて約50体。これまで多くの研究者が素材や製法を調べ、半分ほどが平安期の9~10世紀に作られたことが分かっている。近年の調査で朝廷の一流仏師が手掛けたという見方が強まった。
 田島さんは、当時の伊豆の記録に火山活動の記述が多いことに着目し、9世紀の神津島の噴火と結び付けた。「都で東から雷のような音が聞こえ、火山灰が降ったとある。荒ぶる神々に位を与えて災厄を鎮めるために仏像が作られたのでは」。火山灰については一般的な降灰の流れから「同じ頃、西日本で噴火があったのではないか」とも推測した。
 南禅寺の多くの仏像は正統な素材とされるカヤを使い、等身大を超える一木造り。「地方の実力者が金任せで作れるレベルではない。衣のひだなど細部まで表現が施されている」。室町時代の土砂崩れで本堂と共に埋もれた多くは損傷しているが、同館の菩薩(ぼさつ)像などに特徴を見ることができる。
 論文は11月発行の学術誌「鹿島美術研究」に掲載された。田島さんは「仮説が人の目に触れることがスタート。賛否や新たな研究が生まれ、文化財保護の意識が広まってほしい」と期待する。

 ■地元「物語を後世に」
 南禅寺(河津町)の本堂隣には2013年、同町の保存展示施設「河津平安の仏像展示館」が整備された。室町時代から仏像群の保存を受け継ぐ家系で展示館館長の板垣光彦さん(84)は「千年にわたって守られている宝は全国的にも多くはない。仏像の物語として後世に伝えていきたい」と決意を新たにする。
 南禅寺と同じ地区で地域活性化に取り組む栖足寺(せいそくじ)の千葉兼如住職(46)は「事実が掘り起こされれば、仏像をより知ってもらうことができる。信仰を一層深めてもらえればうれしい」と話す。

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