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2020年6月25日【大自在】

(2020/6/25 07:44)

 計算速度世界一を奪還した国産スーパーコンピューター「富岳[ふがく]」は、性能の高さを山頂に、用途の広がりを裾野になぞらえて命名された。富士通沼津工場も開発の一部を担った
 ▼信仰の対象、芸術の源泉として世界文化遺産に登録された富士山は、科学技術の舞台でもある。江戸後期、伊能忠敬は測量の目標点にした。明治になると山頂に滞在しての観測が始まり、1932(昭和7)年、富士山測候所が開設された
 ▼64年、台風観測の砦[とりで]として巨大な富士山レーダー設置。過酷な建設作業や山頂勤務の使命感、世界一のレーダーの価値は、気象庁職員として山頂勤務経験がある新田次郎が小説「富士山頂」に描いた
 ▼富士山レーダーは任務を気象衛星に引き継ぎ99年退役。山頂測候所も2004年に無人化された。測候所施設は研究者らのNPO法人「富士山測候所を活用する会」が借り受け、07年から研究拠点として運営している。3776メートルの標高だけでなく、独立峰で円すい型の富士山頂は、大気の流れが周囲の山などの影響を受けず、研究に好立地である
 ▼この夏、旧測候所施設も「3密」回避で閉鎖となった。施設利用料収入がなくなり、年間約2千万円かかる活動費用は窮地に。発足当初から呼び掛けている寄付に追加し、インターネットによる募金活動も近く始める
 ▼今夏は仰ぎ見る富士山だが、眺めるだけでなく「不二」の研究拠点の価値にも理解を。コンピューターが高性能を発揮するには精度の高いデータの蓄積が欠かせない。最前線の研究者や技術者を応援したい。

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