【 漫画家塚田ゆうたさん(静岡県出身)の『RIOT』第5集】小さな町の高校生がつくるZINEが、さまざまな「場」をつくり出す

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は10月5日に初版発行(奥付)の漫画家塚田ゆうたさん(静岡県出身)の「RIOT」第5集(小学館)を題材に。
(文と写真=高度専門記者兼論説委員・橋爪充)

「月刊!スピリッツ」2024年7月号で始まった連載の第5集。静岡県松崎町がモデルと思われる五十海町の男子高校生シャンハイとアイジ、同じ高校の写真が得意なケーコが「ZINE(ジン)」を制作する。

彼らにとって3冊目のZINE「まちの中」に、大人から厳しい評価が下る。3人が暮らす五十海(いかるみ)町でライブハウスを営む新宿さんは、ZINEを購入した上で「いまいちだった」と率直に語る。
「まだちょっと」「読むにはハードルがあるねぇ。」

A4中綴じの24ページ、カラー。初めてネットサービスで外部の印刷所を使った自信作に寄せられた、恐らく初めてだろう否定的なコメント。隣町の南津町で開かれるZINEフェスに参加を決めたばかりの3人にとって、これはダメージになるのではないか。

…と、思って読み進めるが、彼らの姿勢は変わらない。「自分たちが楽しんで、作ったモノは伝わると思ってます」とアイジ。ここに収支という概念はない。だが、「伝わるかどうか」を考えた痕跡はある。個人事業主である新宿さんは、彼らの衝動的な行動に、自分の「正論」を吹き飛ばす「風」を感じたようだ。

シャンハイとアイジが始めたZINEをきっかけに、あちこちに「場」ができている。第5集ではそれがより顕著になる。ZINE自体が「場」であり、その求心力は回を追うごとに強まっている。同じ高校に通う鈴木君は「まちの中」をきっかけに同好の士に巡り合う。シャンハイとアイジの行動に寄り添ったりもする。どうやらイラストレーターの変わり者も仲間に加わりそうだ。

誰かが行動を起こし、渦となってさまざまな人を巻き込んでゆく。青春小説の王道だ。「RIOT」はZINEという、多少マニアックな世界を描いてはいるが、実は直球ど真ん中の物語なのである。

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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