(文と写真=高度専門記者兼論説委員・橋爪充)
「DROP」を企画運営する和酒総合研究室「富士虎」の梅澤豪代表
不勉強ながら「東京島酒」は初めて聞く言葉だった。2024年3月に国が地理的表示(GI)に指定した、伊豆諸島の焼酎を指す。地域の気候や風土と結びついた特産品を保護するGIは、2023年11月に静岡の日本酒も指定を受けている。時期が極めて近い。伊豆諸島と言えば、川端康成の『伊豆の踊子』に出てくる旅芸人の一座は伊豆大島出身。明治維新以後は1878年に東京府に移管されるまでは、静岡に属していた(1867~韮山県、1871~足柄県、1876~静岡県)。個人的には春をイメージさせる地域でもある。毎年1月中旬、伊豆大島の伝統行事「椿まつり」をPRするために大島町から関係各位が新聞社にやってくるからだ。
静岡との縁が深い伊豆諸島だが、酒造りの手法は全く異なる。最大のポイントは「麦こうじ」を使用していることだ。静岡の酒蔵は清酒が主体であり、必然的に米こうじを使うことになる。静岡では味わう機会が少ない麦こうじ仕込みの「東京島酒」を飲み比べるため、cosaに足を運んだ。
青ヶ島は伊豆諸島の最南端。「青酎」(あおちゅう)のブランド名を掲げる青ヶ島酒造(青ヶ島村)の焼酎は、全国でも例がない野生の微生物を二段活用(こうじと酒母)した天然発酵と、複数の杜氏が自家製の芋で作る「究極の手造り」が特徴。
杜氏の一人、奥山晃さんによると島には杜氏が7人いる。「蒸留所は1カ所。自分が作ったサツマイモで7人それぞれが仕込むから、年によって量や味わいが異なる」という。炭酸割りにした青酎は、風味の強さが印象的。芋焼酎特有の甘さだけでなく、キリッとした爽快さがある。
青ヶ島酒造の奥山晃さん
伊豆大島の谷口酒造(大島町)の石井貴之さんは酒造りを始めて3年。ベテラン杜氏の一挙手一投足を学ぶ日々という。同社のブランド「御神火」は麦焼酎が主体だが、この日は芋・麦のブレンドタイプを水割りでいただいた。
「麦と芋を一緒に発酵させている」という。もちろん麦こうじを使う。複数の素材を、同じ場所で同じ時間、醸す。極めて難度の高い製法だ。杜氏の経験値がものを言うのだろう。水割りで飲んだ「御神火いも」は芋焼酎寄りの香りが漂うが、含み香は甘さがない。味はドライで切れが良く、後味は麦焼酎を思わせる。口の中で何度も変化を見せる、何とも不思議な焼酎である。
谷口酒造の石井貴之さん
八丈島の坂下酒造(八丈島町)の「芋麦ブレンド」の焼酎は、製法が異なる。沖山範夫社長によると、こちらは芋と麦を別々に発酵させた後にブレンドするという。このタイプの「ジョナリー」を水割りで飲んだ。前任の杜氏の妻の名前を冠したという焼酎は香りふくよかでほどよい甘さが口に漂い、食中酒としての適性の高さをうかがわせた。
「コロナの時期に造りをやめた島内の別の蔵元の原酒を譲り受け、樫樽に貯蔵した」という「黄八丈」は極めて複雑な味わい。気品と優雅さを感じる香りと、料理で言うならば「コク」に近い飲み応えが印象に残った。
坂下酒造の沖山範夫さん
「DROP」を運営する和酒総合研究室「富士虎」の梅澤豪代表は「東京にもおいしい焼酎があるのに、意外と知られていない」と企画の発端を説明した。出展した7蔵のブースでは、静岡ならではの緑茶割り「静岡割り」の提案も行った。
今後については、「緑茶割りのイベントも行いたい。『DROP』名義ではおおむね3カ月に1度の頻度で開催を考える」とした。
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■TOKYO SHIMAZAKE DROP
会場:cosa 2F foodhall(静岡市葵区)
日時:2026年9月12日(土)午後3時~8時
▼参加蔵元・銘柄
「御神火」谷口酒造(伊豆大島)
「嶋自慢」 株式会社宮原(新島)
「島の華」樫立酒造(八丈島)
「黒潮」「ジョナリー」「黄八丈」坂下酒造(八丈島)
「麦冠 情け嶋」八丈興発(八丈島)
「八重椿」「江戸酎」「島流し」八丈島酒造(八丈島)
「あおちゅう」青ヶ島酒造(青ヶ島)
▼参加茶商・茶屋
「春野茶連」(浜松市)
「茶屋すずわ」(静岡市)
「GOOD TIMING TEA」(静岡市)












































































