(文と写真=高度専門記者兼論説委員・橋爪充)

県内の特別支援学校に通う児童生徒の作品を展示する「誰もがWonderfulアート」展。県内の特別支援学校36校から絵画、書など約360点が寄せられた。毎年この展覧会を見ているが、一人一人の表現の豊かさ、力強さは障害のありなしとは無関係だと実感する。
今年はゲスト作家として絵本作家、美術家の田島征三さん(伊東市)を招き、「いのちのけはい」と題したエリアに約80点の作品を展示している。田島さんがこうしたコンセプトの展覧会に参加するのは必然とも言えるだろう。
田島さんの『獣の遠吠え』
専門的な芸術教育を受けていない人が生み出すアートを「アール・ブリュット」と呼び、その芸術的価値や経済的価値を認める動きは今や珍しくないが、この概念や言葉が日本に入ってきたのは1990年代に入ってからと言われている。
田島さんの『集落の掟Ⅰ』
田島さんは、それより10年早く「アール・ブリュット」的な世界に身を投じ、自身の表現を交えて側面支援していた。アーティストとしての嗅覚が働いたのだろう。1984年、田島さんは三重県四日市市の書店で土鈴を購入した。これを制作した滋賀県の福祉施設、信楽青年寮との交流が生まれた。同施設で生産する手漉きの和紙に作品を描き、知的障害者と共同制作の立体作品を発表した。1992年発刊の書籍「ふしぎのアーティストたち」(労働旬報社)で、経緯や当時の心情を詳しく語っている。
「青年寮の紙は、一般に手漉き和紙のもっている、とりすましたところなどどこにもなく、荒々しく、無骨で、粗野なのである。ぼくは、そういうところを気に入ってしまった。ぼくは夢中になって、これらのいとしい紙たちに絵を描きはじめた」(15ページ)
「信楽青年寮の陶芸班の人たちの創る焼物は(中略)説明しがたいエネルギーに溢れていて、いろいろな約束事を踏みにじり、蹴とばして、恐ろしいほどのパワーをもっている。それはどこから湧いてきてどのように育ったものなのか、そのことをぼくは知りたいと思う」(47ページ)
「誰もがWonderfulアート」には、1991年の絵本「もりへさがしに」(偕成社)が出品されている。信楽青年寮の入寮者である村田清司さんの絵に田島さんが文を付けた。モクモクとパクンパクンとピョンという3匹(動物の特定はない)が、おのおの必要とする木を探しに森に行く、というストーリーである。
すでに存在する絵を並べ、そこに物語を当てはめていく。通常の絵本制作とは全く逆の行程だ。なんというクリエイティブな仕事だろう。
田島さんの「いのちのけはい」コーナーの展示風景
2026年1~3月に静岡市美術館で開かれた「かがくいひろしの世界展」にも、似たエピソードがあったと思い出した。重度の脳性まひがある、寝たきりの子どもが残した「筆の痕跡」10枚を使って、かがくいさんは「雲野さん一家はどこへ行く?」と名付けた物語をつくる。2000年代に入ってからのことだ。特別支援学校の教諭だったかがくいさんが、田島さんの仕事を熟知していた可能性は高い。田島さんとかがくいさんに共通するのは、目の前の相手の能力を疑わない、ある種の「無邪気さ」ではないだろうか。「誰がなんと言おうと」の精神、自らの審美眼への確固たる信頼もあるはずだ。グランシップの展示を見ながら、人間の奥底に眠る「表現の可能性」について、あれこれ考えた。
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■グランシップ 誰もがWonderfulアート
会場: グランシップ 6階展示ギャラリー
住所:静岡市駿河区東静岡2-3-1
入場料:無料
会期:9月13日(日)まで
開館時間:午前10時~午後5時











































































