(文と写真=アナウンスマイスター・野路毅彦、資料写真=福島市古関裕而記念館提供)
芹沢銈介美術館の企画展「暮らしに型染を 芹沢染紙研究所の挑戦」の看板
静岡市生まれの染色家・芹沢銈介(せりざわ・けいすけ、1895~1984年)は、普段づかいできる優れた工芸品を安く一般に提供することを目指した。東京・大田区の自邸に構えた工房を起点に、型染で和紙に色を付け、量産に取り組んだ。うちわや、包装紙・年賀はがきなどを制作し、中でもカレンダーは1万部を出荷した年もある人気ぶりだった。芹沢銈介型染カレンダーは、日付の数字に小刀で力強く切り出した味があるのはもとより、文字デザインが毎回少しずつ違って多彩で、色づかいも模様も楽しい。暦としての役割を終えたあとも、捨てるのは惜しく重宝されているのを昭和の時代は見かけた。小さく折られてポチ袋に生まれ変わり、また、花の形に切り取られ、ふすまの破れを隠したこともあったように記憶している。
古関裕而記念館にある古関の胸像
そうした芹沢カレンダーのリユースを、福島市古関裕而記念館で発見した。福島市出身の作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ、1909~1989年)は、物心ついたころから高校野球を熱心にテレビで見ていた私にとっては、夏の甲子園の大会歌『栄冠は君に輝く』の作曲者として、かねてなじみのある人だ。平成生まれには、2020年放送のNHK朝の連続テレビ小説『エール』で俳優・窪田正孝が演じた主人公は、古関がモデルだと言う方が分かるだろうか。
古関の楽曲に存分に触れられる記念館の一角に風景画のギャラリーがあった。古関自身の筆によるものだ。景色を思い浮かべるとメロディーが湧いてきたという古関は、「絵も私にとっては音楽(『風景の調べ 古関裕而スケッチ集』まえがき)」と語った。
愛用のスケッチブックが、ガラスケースに収められていた。それが、なんと芹沢カレンダーで装丁されていたのである。孫娘によると、古関は、芹沢がデザインしたものを収集し、カレンダーを「(祖父が)自らスケッチブックの表紙に貼っていた」という。
古関裕而のスケッチブック
写真のスケッチブックは1969年5月のものでカバーされているが、他の年・月の芹沢カレンダーによる装本も幾つか残っている。昭和の東京五輪の行進曲を書いた国民的作曲家が、芹沢銈介ファンだったことが明らかになった。
スケッチブックの中身
古関メロディーの魅力は、格調の高さと大衆性を兼ね備えているところだと言われる。これは、上質な工芸を日常の暮らしの中に溶け込ませようとしていた芹沢の姿勢と相通ずるのではないか。そのことと、古関が芹沢の作品を気に入った理由や感性は、つながっているように思える。<DATA>
■静岡市立芹沢銈介美術館 企画展「暮らしに型染を 芹沢染紙研究所の挑戦」
住所:静岡市駿河区登呂5-10-5
開館:午前9時~午後4時半(月曜休館、9月21日は開館)
観覧料(当日):一般420円、高校生・大学生260円、小中学生100円、未就学児無料
会期:9月23日(水・祝)まで
■福島市古関裕而記念館 企画展「古関裕而の風景」
住所:福島市入江町1-1
開館:午前9時~午後5時(9月10日、13日は館内イベントのため観覧不可)
観覧料(当日):一般300円、小中学生100円
会期:9月23日(水・祝)まで











































































