【LIVE HOUSE UHUの「村田陽一ソロパフォーマンスライブ」】トロンボーン1本でオーケストラサウンド。「音を楽しむ」姿と探究心

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区のLIVE HOUSE UHUで8月11日に開催されたトロンボーン奏者村田陽一さん(静岡市出身)の「ソロパフォーマンスライブ」を題材に。
(文と写真=高度専門記者兼論説委員・橋爪充)

昨年7月、同じ場所で見て以来の村田さんのソロライブ。村田さんにとって、2025年は故郷との関わりが多い年だった。10月、静岡市清水文化会館マリナートで富士山静岡交響楽団と共演。11月には同市駿河区のグランシップで、自身も含め18人編成の「村田陽一ビッグバンド」でにぎやかなライブを披露した。

2026年も静岡市での演奏機会が続いた。この日のライブの2日前には、グランシップでの「ビッグバンド・ジャズ・フェスティバル」にゲスト出演。県内のアマチュアジャズ楽団と共にステージに立った。
これまで無風だった「ホーム」での活動が、せきを切ったように活発化しつつある。

8月11日のライブは、15年ほど前から取り組んでいる「ソロパフォーマンス」。録音、再生、オーバーダブを瞬時に行うエフェクター「ルーパー」を使って、トロンボーン1本で重層的なバンドサウンド、オーケストラサウンドをつくりだす。

2012年に初めてこの演奏を聴いたときの驚きをいまだに覚えている。ルーパーを使う多重演奏、という意味では例えばケラー・ウイリアムズのライブなどで体感済みだった。ただ、それをトロンボーンでやるとは。

トロンボーンという管楽器は、ギターに例えればフレットがないようなものだから、12音階を正確に出すのはかなりの技巧が必要だ。ルーパーでフレーズを重ねるとなれば、例えば八分音符一つフラットしただけで、和音が台無しになってしまう。リスキーであること、この上ない。

すでに名を成している村田さんが、なぜこんな「あぶない橋」をわたるのか。当時は不思議でならなかった。

2年続けてこのライブを見て、ようやく手がかりらしいものが見つかった。村田さんは「音を楽しんで」いるのだろう。還暦を過ぎてなお「自分に何ができるか」「どこまでできるか」に興味があるのだ。自分がどこまで「音を楽しめるか」。挑戦する姿を客に見せる。「ソロパフォーマンス」と題したライブの真意はそこにあるのではないか。

今回のライブも喜々として音と戯れる村田さんだった。『Stand By Me』の有名なベースのフレーズで幕を開けたが、フレーズを重ね、トラックを抜き差しするうちに、いつの間にか「イパネマの娘」になっている。なんだこれは。やっていることは、複数のターンテーブルを使うクラブDJにとても近い。

あらかじめ打ち込んだ音源も使い、昨年の富士山静岡交響楽団との共演曲や、イヴァン・リンスとの共演アルバムからの曲、カバー曲など盛りだくさん。バーブラ・ストライザンドで知られる『追憶』の打楽器の音処理は明らかにダブを感じさせた。

こんな引き出しもあるのか。村田さんの懐の、底知れなさを思い知った2時間半だった。

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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