【偶然にしては出来すぎ!? 静岡県道事情】駿河湾フェリーの223号線以前から『22(ふじ)』も『24(ふじ)』も『398(サクヤ)』もなぜか富士山のふもとを走っている!

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は、富士山周辺を走る県道の「語呂合わせ」を題材に。
(文と写真=経営戦略室・天野大輔)

数字に意味や音を乗せる「語呂合わせ」。日本人が大好きなこの文化だが、ここ静岡県においては、富士山が絡むと行政までもが本気で乗り出してくる。代表格は2月23日の「富士山の日」。静岡県が富士山への理解と関心を深めてもらおうと、2009年に条例で制定した。観光振興を掲げて誕生した「県道223(ふじさん)号(清水富士宮線)」は、なんと清水港と土肥港を結ぶ駿河湾フェリーの海上航路そのもの。全線が海の上という異色の県道で、船上の標識は絶好のフォトスポットとなり、どこからでも富士山を仰ぎ見ることができる。2013年4月、世界文化遺産の登録に先駆けて指定された。

……と、ここまでは狙って作られたもの。だが実は、この223号が指定されるずっと前から、広大な静岡県には、まるで最初から語呂合わせで作られたかのような富士山ゆかりの数字の県道が、なぜか示し合わせたように富士山のふもとに集結している。

まさに「ふじ」―想定火口範囲の真上を突っ切る県道24号

県道24号が通る十里木高原。秋は紅葉が美しい


まずは県道24号(富士裾野線)。「ふじ」のストレートな語呂合わせである。富士市今泉を起点に、富士山こどもの国や富士サファリパークなどの観光スポットがある十里木高原を抜け(一部は国道469号と重複)、裾野市佐野へ至る。富士山の山体を横断するルートだ。

県が公表している「富士山ハザードマップ」を開くと、24号はマップ上に描かれた想定火口範囲を通過している。名前が「ふじ(24)」なだけでなく、物理的にも「富士山そのもの」を突き抜けている県道だ。ちなみに2桁の県道番号は、国に指定された県内の重要幹線である「主要地方道」に与えられる数字。行政が狙って「24(ふじ)」と名付けたはずはないのだが、この一致は出来すぎだろう。

「県道22(ふじ)号」の沿道は、湧き水とかぐや姫が眠る富士山の聖地

県道22号沿いの富士市原田地区には、かぐや姫伝説にまつわる史跡が点在する


県道223号や2月23日の「富士山の日」などは、「ふじ(24)」ではなく「22(ふじ)」の方を採用しているわけだが、県道22号(三島富士線)も、名前の通り富士山の南側、三島市と富士市を東西に結んでいる。古くは「根方街道(ねかたかいどう)」と呼ばれた歴史ある道だ。

この道路が通る富士市の原田・吉永地区は、富士山の伏流水がコンコンと湧き出る「泉の郷」。それだけではない。沿道近くの「竹採公園」は、かぐや姫の生誕地と伝わる場所で、園内の竹林には「竹採姫」と刻まれた石碑がひっそりと佇んでいる。

一般的にかぐや姫は月へ帰るが、富士市に伝わるかぐや姫伝説では、帰る場所は月ではなく富士山だ。つまり県道22号は、単なる語呂合わせを超えて、富士山信仰と物語が交差する「富士山の聖地」そのものを走っているのである。

女神の名を戴く「県道398(サクヤ)号 」

県道398号線の走る富士宮市の上稲子


サクヤといえば、富士山本宮浅間大社の主祭神であり、富士山そのものを神格化した女神「木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)」にほかならない。アニメやゲームのキャラクターの元ネタとしてよく登場し、サクヤの名を冠したキャラクターは多い。静岡新聞SBS公認VTuberのモチーフにもなっており、名前は「木乃華サクヤ」だ。

この女神の名を想起させる県道398号が走っているのは、富士山の八合目以上を境内として管理する富士山本宮浅間大社のお膝元であり、富士山への登山道や富士山世界遺産センターも抱える富士宮市である。そんな富士宮市のイメージキャラクターもやはり「さくやちゃん」だ。

道中は尾根に阻まれて直接富士山が見えないが、その尾根に位置する桜峠は富士山の絶景スポット。上稲子の棚田や平維盛の伝説が残る墓など、歴史と自然の深みに溢れた道だ。

神秘の山が手繰り寄せた?偶然たち

駿河湾上空からの富士山


223号ばかりがフィーチャーされがちだが、もとからあった「22」「24」「398」も、知れば知るほど巡ってみたくなる名道ばかりである。かつて「駿河」「遠江」「伊豆」という3つの国に分かれていたほど広い静岡県において、富士山にまつわる語呂合わせの数字だけが、なぜかピンポイントで富士山周辺の自治体に収まっている。

単なる「確率のイタズラ」と切って捨てるには、あまりにもドラマチックだ。富士山という霊峰が持つ謎の引力が、数字の運命すら手繰り寄せたのではないか―そんなオカルトめいたロマンすら感じてしまう。そういえば、2月23日は今上陛下の誕生日であり、こちらは正真正銘の国の祝日だ。やはり富士山には、何か「持っている」と言わざるを得ない。

ちなみに、石垣いちごで有名な静岡市・久能海岸沿いの国道150号には「久能いちご海岸通り」という愛称がある。「いちご」と「150(イチゴー)」……。これも狙ったのか、それとも超自然的な導きなのか。そんな邪推をしたくなる出来すぎた偶然が、静岡にはまだまだ転がっている。

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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