島田市博物館で開催、島田鍛冶の刀剣から読み解く企画展『武の移ろい 器の進化』(〜9/27まで)「御手杵」や「大慶直胤」、刀剣ファン必見!戦国の記憶、ここにあり

武器の歴史がわかる企画展「武の移ろい 器の進化」


古今東西、人類の歩みは常に「武器」とともにありました。旧石器時代から現代まで、私たち日本人の武器がどのように進化してきたのか。そんな武器の歴史をたどる企画展「武の移ろい 器の進化」が、島田市博物館で開催されています。 

展示室内には、石器から始まり、刀剣や火縄銃、さらには戦の記憶を伝えるものまで、武器の進化の足跡がずらりと並びます。歴史の変容に圧倒される中、やはり目を奪われてしまうのが日本刀の存在。今回は、そんな刀剣の魅力にたっぷり浸りながら、見どころをご紹介していきます。

島田鍛冶が息づく町・島田 


今回の舞台である島田市は、日本刀の世界では有名な静岡県屈指の刀工集団「島田鍛冶」が生まれた場所です。

室町から戦国という激動の時代、ここを拠点に数多くの名刀が生み出されました。彼らが鍛え上げたのは刀剣に留まらず、実戦で欠かせない槍や矢じりなど多岐にわたり、武士たちから絶大な信頼を寄せられていたといいます。かつて職人たちの刀を打つ音が響き渡っていたであろう街の賑わいを想像しながら、その魂が宿る作品をぜひ間近で感じてみてください。

平安時代の太刀「古千手院」


今回の展示の中で、特に注目してほしいのが日本刀の黎明期を代表する太刀『古千手院(こせんじゅいん)』です。大和国(現在の奈良県)で打たれたこの刀、ほっそりとした見た目からは想像がつかないほどの芯の強さを秘めていて、平安時代の優雅さがギュッと詰まっているんです。馬上で戦うために生まれた太刀だからこその、独特のフォルム。ぜひ会場でじっくり観察してみてください。

天下三名槍の一つ、島田鍛冶の「御手杵」


会場に入ってすぐ、圧倒的な存在感で出迎えてくれるのが「天下三名槍」の一つ、「御手杵(おてぎね)」の写しです。刀身の長さは約2.3メートル。戦国大名・結城晴朝が、島田鍛冶の名工・四代目 五条義助(ごじょうよしすけ)に打たせた槍として知られています。

ちなみに博物館入口では、正親町天皇や足利将軍、織田信長、豊臣秀吉、福島正則へと伝わった「日本号」と、徳川四天王の一人、本多忠勝が愛用した「蜻蛉切」のレプリカが、復元された御手杵とともに、お出迎えしてくれます。

展示を担当した学芸員の岩崎さん(身長183cm!)と並んでも、その巨大さは一目瞭然。全長約3メートルという長さは、長身の方でも取り回しに苦労するレベルだそうで、ディスプレイの配置にも相当な工夫があったのだとか。こうして3つの名槍を一堂に比較できるのも、今回の見どころの一つです。 

この御手杵(写し)、実は本物は太平洋戦争時の空襲で失われてしまったのですが、忠実に再現されました。

その刃先を見てください。一般的な刀のような2面構造ではなく、断面が正三角形になっているんです。ただの形状美かと思いきや、これが「刺突」という槍本来の目的に特化した、折れにくく強靭な造りなのかもしれません。

ちなみに、この槍を打ち上げたのは先述の「四代目 五条義助」。今川氏が京都から招いた職人と言われています。槍の需要が爆発的に高まった戦国期、彼がどれほど頼りにされていたかが伝わってきます。

展示室には、そんな島田鍛冶が鍛えた短刀も並んでいます。こちらもあわせてご覧ください。 

 短刀の持ち手の部分である茎(なかご)に目を凝らすと、『元亀二年辛未八月廿四日義助』という刀の名前である銘が刻まれていました。元亀2年、すなわち1571年。信長の延暦寺焼き討ちや、武田信玄の西上作戦など、戦乱が激しさを増していた時代です。そんな緊迫した時期に、日付まで鮮明に残されていること。そこには、刀工・義助のどのような想いが込められていたのでしょうか。

波立つような刀門は、見ていて思わず引き込まれてしまいます。義助の短刀といえば、やはりこの切っ先の鋭さがひと際印象的。今にも研ぎ澄まされた切れ味が伝わってくるようです。 

江戸時代の名工に作られた刀「大慶直胤」


 戦国期を過ぎ、刀の役割が実戦用から武士の象徴へと移り変わった江戸時代。そんな時代にあって、あくまで『戦うための刀』の原点を追求し続けたのが、大慶直胤(たいけいなおたね)です。彼自身は島田鍛冶ではありませんが、静岡ゆかりの刀工であり、幕末を代表する名匠として知られています。

直胤の刀には、ひと目見ただけで切れ味の鋭さが伝わってくるような力強さがあります。

ただ、一番驚かされるのは、茎に刻まれた銘の詳しさかもしれません。通常、刀の銘といえば2〜4文字の名前くらいしかよく見ません。ところが直胤は、作刀した場所や時期、さらにはその理由まで、物語のように事細かに刻み込んでいます。柄の中に隠れてしまう部分にまで、びっしりと並ぶ小さな文字の数々。この細密な彫り込みから、彼の職人としての凄まじい器用さと、一本一本への並々ならぬこだわりが伝わってきます。

甲冑や銃の展示も


展示室をさらに進むと、幕末の事件に関わった人物の品が登場します。なんと、京都の近江屋事件(坂本龍馬と中岡慎太郎が襲撃された事件)に関わったとされる「京都見廻組」の今井信郎が、事件後に移り住んだのがここ島田市だったんです。そんな縁で展示されているのが、彼が実際に身につけていた兜。ご子孫がその兜を纏った写真も添えられていて、遠い歴史上の人物が急に生身の人間として身近も感じられます。  
 
また、戦国期に日本へ伝わり、瞬く間に独自の進化を遂げた火縄銃の展示も見応えがあります。よく見ると銃身には作者の名が刻まれているのですが、部品から装飾、弾に至るまで一貫して作り上げる職人たちのこだわりには脱帽します。島田の職人が手がけた火縄銃も並んでおり、この地がものづくりの地として栄えていたことを改めて実感させられます。 

 時代とともに移り変わる武器の姿。かつては誰かを守るための道具として磨き上げられていたものが、今では技術と歴史を伝える貴重な美術品に。そんな時間の流れを目の当たりにし、平和のありがたみをしみじみと感じました。 

<DATA>
■企画展「武の移ろい 器の進化」
会場:島田市博物館 
住所:島田市河原1丁目5-50 
開館時間:9:00〜17:00 
休館日:月曜日 
TEL:0547-37-1000 

静岡在住ライター大倉麻衣子が、おでかけ日和に行きたいグルメ、神社仏閣やアートスポットなどを中部エリア中心に紹介。地元ならではの“ツウ”な情報から旬の話題、季節のイベントまでたっぷりとお届けします。

あなたにおすすめの記事

人気記事ランキング

ライターから記事を探す

エリアの記事を探す

stat_1