【進む海水浴離れ】夏の代表的レジャーである海水浴を楽しむ人が減っている。背景には猛暑やレジャーの多様化などがあり、海水浴場も砂浜の消失などから減少傾向。海水浴はこれからどこに向かうのか。

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「進む海水浴離れ」。先生役は静岡新聞の川内十郎論説委員です。
(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2026年7月28日放送)

(川内)今日は夏の代表的レジャーである海水浴を楽しむ人が減っているという話です。多くの人がさまざまな思い出を持っていると思いますが、門努さんは?

(山田)父に連れていってもらい、楽しかった。

(川内)子どもが小さかった時以来、30年近く行っていないかな。ノスタルジックな感じ。

(山田)学生時代、男女2対2で行くとか。十郎さんもあったでしょ。

(川内)甘酸っぱいやつですか。苦い方が多かったな。苦しょっぱいというか…。

ピーク時から9割近く減少


(山田)その海水浴に行く人が減っているんですね。

(川内)コロナ禍で大きく落ち込みましたがその後も以前のように回復せず、日本生産性本部の「レジャー白書」によると、年間に1回以上海水浴に行った人は、2024年に440万人で、ピークだった1985年の3790万人から、9割近く減りました。

(山田)そんなに減ったのか。

(川内)日本財団が2024年に行った意識調査では「海に行きたい」「どちらかと言えば行きたい」は59%で2022年に比べて13ポイント減少し、特に20代と30代は減り幅が大きかったです。

(山田)まさに海水浴離れですね。

(川内)さっき苦しょっぱい話をしましたが、以前は海水浴を思わせる、夏の海をテーマにしたラブソングが多かったと思いませんか。

(山田)ほんと。山ほどありますね。90年代ポップスではミスチルなんか。

(川内)私はサザンの「真夏の果実」かな。

(山田)いいですね。

(川内)減少の背景には猛暑やレジャーの多様化などがあると考えられます。まず暑すぎる。熱中症対策も欠かせません。日焼けを敬遠する傾向も強まっています。紫外線の浴び過ぎはシミやシワを増やし、皮膚がんの発症リスクを高めるとされます。

(山田)男性も上半身裸ではなく、ラッシュガードを着るようになっています。

海水浴場も減っている

(川内)海水浴場も減っています。日本観光振興協会の調査では、全国で1993年の1379カ所から、2024年は969カ所まで減少しました。利用者減による財政難での開設見送りや、砂浜の消失などが原因とみられます。温暖化で南極の氷が溶けたり海水が膨張すると海面が上昇し、砂浜が縮小します。

(山田)砂浜が減った話は聞いたことがある。

(川内)海面上昇では、波に洗われて浸食も起きやすくなります。さらに高度成長期に川からコンクリートの材料となる砂が大量に採取され、海岸に流れ込む砂が減ったことも要因と思われます。「2050年には日本の砂浜の半分が消失する」との予測もあり、ハワイでもビーチの激減が懸念されています。

(山田)リスナーから声が届いています。「コロナ禍で海の家が休止し、そのまま廃業した」「砂浜が熱いし、海の水がベタベタするから海水浴には行きたくない」とのこと。

(川内)特に若年層は森や川など、緑や真水への志向が強いように感じます。

(山田)それ、分かります。

静岡の水質の良さは特筆もの

(川内)静岡県の海水浴場はどうでしょうか。今年のシーズン前に県が細菌の数や透明度など水質検査を実施したのは51カ所でした。静岡新聞によると、1989年に調査したのは60カ所で、10カ所近く減ったことになります。

特筆すべきは水のきれいさで、今年は51カ所中42カ所が最高の「AA」でした。民間のまとめですが、都道府県別の「AA」の数として昨年まで7年連続の全国1位だったというデータもあります。

(山田)有名な海水浴場もたくさんありますね。下田の白浜とか、中部では静波とか。

(川内)私は生まれが静波で、小さいころはよく泳ぎに行きました。海の近くで元気に育ちました。

(山田)静波は人気ですね。

静波海岸(牧之原市)

当初は「潮湯治」

(川内)ここで日本の海水浴の歴史を振り返ってみたいと思います。

(山田)歴史ですか。

(川内)明治中期までは海水浴は「うみみずゆあみ」と読み、海水に浸って皮膚や病弱な体を鍛える民間療法である「潮湯治」(しおとうじ)として親しまれていたとの研究結果があります。

(山田)温泉のような感じだな。

(川内)世界的には18世紀にイギリスのブライトン(イングランド南東部のリゾート地)で医師が海水に浸る療法を始めたのが最初の近代的海水浴とされ、日本でも西洋医学を学んだ医者で政治力のある人が医療行為のための海水浴場を開きました。

初代陸軍軍医総監の松本順が神奈川県の大磯に1885年(明治18年)に開いた海水浴場は日本最初の「本格的な海水浴場」とされます。それ以前にも、愛知や三重などで海水浴場が開かれた記録もあります。

(山田)大磯か。今でもメジャーですね。

(川内)潮湯治自体は、「方丈記」を記したことで知られる歌人の鴨長明の和歌から平安末期までさかのぼるという説もあります。

(山田)方丈記は勉強したような気がする。

(川内)当初は泳ぎが目的ではないので、流されないように海の中に立てられた杭につかまって浸ったり、男女の混浴が禁じられていたりというようなこともありました。明治末期には行楽の要素が強まり、東海道線の延伸や江ノ電の開通など鉄道の発達に合わせて全国に海水浴場が増えていったようです。

(山田)海といえば湘南のイメージが作られていったわけですね。

「ユニバーサルビーチ」も

(川内)減少する海水浴客への対応など、新しい動きにはどんなものがあるか見てみます。気候変化への対応では、開設時期を後ろにずらし9月上旬までという海水浴場が出てきました。

夕涼み需要を狙って営業時間を週末などは延長する海の家もあります。ファミリー層向けでは海上に遊具を浮かべた「海上アスレチック」が増えているようです。西伊豆には駐車場の混雑緩和のために事前予約制のところがあります。

(山田)西伊豆ではシュノーケリングのポイントとか、駐車場が予約の所が多いですよ。

(川内)東京の立川市には2017年、海がない国内最大級の人工砂浜「タチヒビーチ」が登場しました。南太平洋のタヒチではありません。旧日本軍の練習機も製造した「立川飛行機」を前身とする立飛(たちひ)ホールディングスが土地を所有していて、シャレを効かせたネーミングのようです。

(山田)名前が面白い。

(川内)バーベキューやビーチバレー、ビーチサッカー、ビーチフラッグなどが楽しめ、週末にはフラダンスや音楽ライブなどのイベントも行われるそうです。

(山田)都会的ですね。

(川内)最近の動きとして県内の海水浴場でも、障害者を含めた誰もが楽しめる「ユニバーサルビーチ」と呼ばれるイベントが開かれるようになりました。

(山田)どんな内容なんですか。

(川内)民間団体やNPO法人などが企画し、水陸両用車いすなどに乗った当事者をボランティアらがサポートし海遊びができます。「海水浴場はバリアフリー環境が整っていないと感じる人が多い」という調査結果もあり、改善されれば障害がある人も日常的に海水浴ができるようになるとも感じます。

(山田)確かに。ここまで聞いて思ったんですが、海水浴場ってどこが管理、運営しているんでしょうか。

(川内)市町村、自治体と観光協会などによる協議会、民間と大きく分けて3パターンがあり、駐車場の収入などをライフセーバー配置の費用などに充てているようです。

(山田)なるほど。

「泳ぐ」から「過ごす」に

(川内)経営者の高齢化などで海の家も減っています。これからは海で泳ぐだけではなく、「ビーチ」として渚の散歩や食事など、朝から晩まで、四季を通して海辺を多様に楽しむ「過ごす」というスタイルが広がるのかもしれません。

(山田)リスナーからの声です。「これだけ海水浴に行かなくなると、泳げる人が減るかもしれません」とのこと。

(川内)大事な視点です。以前、このコーナーでもお話ししましたが、水泳の授業をやらない学校が増えています。水に慣れることは水難事故の防止のために重要で、水泳授業が縮小する中、海水浴が果たす役割は大きいのでは。

(山田)おぼれないためには、水を体感することが大切ということですね。

(川内)静岡のきれいな海は、泳ぐだけでなく水辺にいても気持ちいい。いろんな楽しみ方で、存分に味わっていただきたいと思います。

(山田)この夏、海に行くことを計画している人も多いと思います。安全に留意し、楽しい思い出をたくさん作ってください。今日の勉強はこれでおしまい!

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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