※本記事には作品のネタバレが含まれます。未鑑賞の方はご注意ください。
(文と写真=経営戦略室・天野大輔)

2026年7月25日(土)、富士市文化会館ロゼシアターでアニメ映画『超かぐや姫!』の舞台あいさつ付き特別上映会が開催され、山下清悟監督とかぐや役を演じた声優の夏吉ゆうこさんが登壇しました。上映は計2回行われ、各回600人以上、合わせて1200人ものファンが来場。舞台あいさつは報道陣にも公開され、地元メディアが取材に訪れました。
静岡新聞SBSでは新聞、テレビ、WEBを通じて舞台あいさつの模様を中心に報道。さらに、SBSラジオのアニメラジオ番組『TOROアニメーション総研』は、山下監督への単独インタビューを行い、青木隆太アナウンサーがインタビュアーを務めました。
かぐや姫伝説の縁で富士市とコラボ
上映会会場の中ホールのホワイエには、これまでのコラボで展示されたパネルなどが並んだ
『超かぐや姫!』は、2026年1月よりNetflixにて独占配信されている、歌で繋がる少女たちの絆を描いたオリジナルの長編アニメーションです。日本最古の物語とされる「竹取物語」をモチーフに、VTuberやボカロ、仮想世界といった現代のネットカルチャーを融合させたストーリーが大きな反響を呼び、その後の劇場公開でも大ヒットを記録しています。
富士市では、かぐや姫伝説のゆかりの地である縁から、タイアップが実現。配信開始直後の2月1日(日)から、スタンプラリーや岳南電車の記念ヘッドマーク掲出車両の運行など、さまざまなコラボレーションが行われてきました。こうした流れの中で、舞台あいさつ付きの上映会が開催され、7月26日(日)には「富士まつり」の花火大会が『超かぐや姫!』とコラボ。かぐやによるアナウンスが行われたほか、作品のキャラクターたちの歌う「Reply」「ray」に合わせた花火が夜空を彩りました。
富士市でのコラボレーションはまだまだ続いていきます。上映会が行われた7月25日(土)から、岳南電車に新たなデザインのヘッドマークが掲げられ、9月末まで掲出される予定となっています。劇場での上映はいったん終了しましたが、9月18日(金)から特別フォーマット上映および通常版の再上映が決定しました。配信開始から半年以上が経過した今もなお、熱気が冷めやりません。なぜこれほどまでに人々を惹きつけるのか。静岡との縁や制作時の裏側、そして作中に仕込まれた緻密な演出について、山下監督が生の言葉でたっぷりと語ってくれました。
実は静岡に縁あり? 下田に実家がある山下監督が感じた「富士市」の熱気
舞台あいさつに登壇した山下監督
インタビューの冒頭、「静岡へいらっしゃったのは何度目ですか?」と問われると、「静岡はいっぱい来ていますが、富士市は初めてです。実家が伊豆なので静岡自体は結構なじみがあるんです」と笑顔で語りました。最寄り駅の下田からさらに山を登って1時間ほど行った場所に実家があるという山下監督。「下田に両親が引っ越したのはもう僕が上京してからの話。育ちは埼玉、生まれは青森だったりとか、結構本当にいろいろ転々としてましたので、実家とはいえ…という感じです」と、静岡への意外な縁を明かしました。
富士市への初訪問については「こうして東京を離れて舞台あいさつをさせていただき、別の場所にいらっしゃる方々の顔をもう一度見ることができて、いろいろなところにファンがいらっしゃるんだなというところで非常に感激しております」と、ファンとの直接の交流に感慨深げな様子を見せました。
また、富士市でのコラボスタンプラリーなどタイアップ展開についても言及。「富士市長と話していて、すごく情熱を持ってコラボのお話を語っていただきまして、とてもうれしく思っています」と、自治体や県内企業との結びつきに感謝を口にしました。
142分に込められた「作画の苦労」とオリジナル作品ならではの統制
舞台あいさつ時の(左から)山下監督、夏吉さん、司会の鬼頭里枝さん
自身初の長編作品となった本作。一番大変だったポイントを問われると、アニメーション製作ならではのプロセスについて語ってくれました。
「アニメーション作品というのは、カメラを回して撮影していれば出来上がるというものではなくて、1枚1枚絵を描いて、それを並べていくことで初めて映像ができていく。そこに声優さんが声を当てていくという流れになります。その絵を作っていくところが現場としては一番の醍醐味であり、大変なところだったのかなと思っています。線が比較的多めな作品で、崩れないようにというか、しっかりと視聴者の方々に見応えがあるように作るところがやっぱり難しかったのかなと思います、一番時間をかけたのも作画に関する監修だったりとか、自ら描いてるところもありますし、やはりその辺が印象には残ってますね」
また、オリジナルの長編作品における役割分担の難しさについても触れました。
「原作がもしあれば、例えば『原作のこの良さはこの人に頼もう』みたいなことって結構できるんですけど、オリジナル作品だと、まず『どういう空気感なのか』とか、『どういうことをやりたいのか』っていうところは、監督しか知らない状態ですので、基本的には全ての要素に指示は出さなければならない。その上で、キャラクターデザインの方にも立っていただいていますし、ライブの演出であったりとか、各パートの演出っていう方ももちろんいらっしゃるんですけども、陣頭指揮を執ったのが自分であるというような感じの捉え方でしょうかね」
上映時間142分という長尺についても、青木アナから「何時間あれば本当に全部いけたと思います?」と聞かれると、「本当に全部って言われるとすごい難しいですけど…あと30分ぐらい欲しかったとは思いますけどね(笑)。でも、今のかたちでいいと思います。総合的には」と、監督としての本音をのぞかせました。
ギミック満載のアクションシーンと作中に潜む遊び心
山下監督のかけ声で発声の練習をする発声可能上映の来場者
ファンから高い評価を得ているアクションシーンについては、武器のギミックや役割設定の重要性を力説しました。
「多人数同士で対戦するゲームみたいなジャンルがあるんですけど、3対3とか5対5とかで。そういうものをやりたいという話をしていて。この作品におけるこのKASSEN(作中に登場するゲーム)シーンって一つの要素でしかなく、ずっと戦い続けるスポコンの作品ではないので、結構さらっと流してしまうこともできる要素だったと思うんですけど。そこを手抜いちゃうと、世界観の説得力が出ないかなという風に思ったんで。やっぱり武器のギミックであったりとか、役割みたいなところをすごく大事にして考えていたかなっていうのは思います。デザイナーの方もすごくアイデア豊富な方で、いろいろなアイデアを出していただいて。輪刀がパタンって閉じると、弓の形状になるみたいなのとか、そういうギミックをすごくたくさん入れてるので。まあ、出し切れなかった設定もかなり多いんですけども(笑)。性能や技名とか大体全部設定はされていて。ほとんど出さぬまま終わるという感じですが、それぐらいがちょうどいいのかなと思ってやっていました」
さらに、劇中でキャラクターたちが乗る移動手段についても話題が及び、「帝とか乃依とか雷は、虎バイクっていうものに乗っていて。彩葉は鳥ですよね。で、ヤチヨはサカバンバスピスの神輿に乗っているという(笑)。あの『サカバンバ神輿』もフリーで使って良いデザインの許可が出ているものを使わせていただいています」と、ユーモアあふれる小ネタの裏側を明かしてくれました。
「気づいてくれた人がいた」監督が明かす、ラストライブの緻密な演出
山下監督(左)とインタビュアーを務めたSBS青木アナウンサー
SNSを中心に大盛り上がりを見せたファンによる「考察」について話題が及ぶと、山下監督は「説明不足の部分がかなりあると自覚をしていたので、好意的に受け取っていただけるか、単純に描写不足として受け取られるか、賭けな部分はありました。皆様の反応を見てみると、その描写不足だったところに、良い意味で余白があるっていう風に捉えていただいてる方もすごくいらっしゃった印象だったので、安心しました」と語ります。
さらに、「気づいてもらえて嬉しかったという考察は?」と聞かれると、監督自身が仕掛けた色彩の演出について明かしてくれました。
「ラストライブの時にかぐやのインナーカラーが、最後に向き合った時にスーっと消えていくみたいな演出があるんですけど、かぐやのアイドルとしてのはつらつさだとか、神聖さというか、特別な感じっていうのがスっと抜けていって、帰ってしまうっていう伏線として置いているんです。その後にヤチヨが『私はもうおばあちゃんです。キラキラのかぐや姫はおばあちゃんです』っていうシーンがあるんですけど、そこでも実はインナーカラーがちょっと弱まっているというか、明滅している。あれは最初から決まっていたものではなくて、最後に監修して観ている時に、ここでこれ入れたら対応しそうだなと思って。それに気づかれている方がいらっしゃって、『よく見てるな』っていう風に思いましたね」
こうした後から足された細やかな感情表現は作中の随所に散りばめられており、ラストライブ前のかぐやとヤチヨの会話シーンでも、よく見るとFUSHIの顔に泣いているような描写がリテイクで足されているとのこと。こうした妥協のない作り込みが、繰り返し鑑賞するファンを惹きつける大きな要因となっています。
8000年の歴史と「登呂遺跡」? キャラクター設定・歴史の裏話
山下監督のインタビューを放送中のSBSラジオのスタジオ
物語終盤の回想シーンに登場する歴史的な人物たちについても、ユニークな製作裏話が飛び出しました。
「偉人ばっかりいたわけじゃないと思っていて、普通に市井の人々というか、普通にその辺にいる一般の人たちの中に絆を築けた方々がいるんだろうなって。ヤチヨの8000年の間って本当にたくさんの方と出会ってきたと思っていて。でもその8000年のなかで、縄文時代が6000年くらい(笑)。長く続く時代なので、多分縄文人とのやり取りも相当あったんだろうなみたいな(笑)10人いる中で8人が縄文人だったら、さすがに面白くないだろうと(笑)。そこはちょっと偏りを持たせて、基本的には近代で、ある程度『こういう立場の人なんだろうな』っていうのを想像できるような方々でまとめたりとしてました」
「どういうルートでFUSHIの姿で日本を移動していったのかなみたいなことも考えて。多分最初に九州辺りからどんどん登っていってみたいな感じのことをちょっと考えてたかなと思いますね。一番最初にタケノコが不時着しているのは、神奈川とかその辺だった気がするんですけど、関東地方に行って、その後多分九州に渡って」
古墳時代の歴史や遺跡の話に波及すると、静岡市にある「登呂遺跡」の話題も浮上。「かぐやも登呂遺跡に行っていたんじゃないでしょうかね。長い時間があるので(笑)」と山下監督から静岡のファンへ向けたサービス精神あふれるコメントが飛び出すと、青木アナも「非公式設定ですがね(笑)」と笑顔で応じるなど、静岡メディアならではのローカルな歴史トークで盛り上がりを見せました。
まだまだ続く『かぐや』との日々―山下監督が描くクリエイターとしての未来
上映会には各回600人以上のファンが集まった
公開から半年を経過した今もなお、監修や収録作業に追われているという山下監督。「別の案件を抱えてはいるんですけども、多分ほとんどの日が、半分ぐらい『かぐや』の監修で終わってるんじゃないかという感じはしておりまして。収録とかも結構ありますので、まあしばらく続きそうかなとは思ってます。楽しいですよ、『かぐや』大好きなんでね!」と語り、青木アナから「やっぱり『かぐや』がかまってちゃんなんだなって」と突っ込まれると「離してくれないというか(笑)。自分がどちらかというと『かぐや』側の人間ではあるので、うちからこう『こういうのやりたい』って言ってることもすごくありますと、作品への深い愛着を覗かせました。
今後の展望については、「そんなに数を考えることって1人のクリエイターってできるものではなくて。やっぱり1個か2個が限界なんじゃないかなと思っていて。自分がこの『かぐや』という、一つ皆様に認知していただいたものができて、その次にまた別のものを作るっていうのはハードルがものすごく上がってくるので。まあ、そうですね、もう1個ぐらいは何かしっかり自分の色を出したものをきちんと皆様に届けるみたいなことはやりたいなと思ってますが、だいぶ時間をかけてちょっとまた次回作みたいなものは練っていきたい」と意欲を示しました。
「自分と一緒に新しい景色を」ファンへの感謝とメッセージ
舞台あいさつで笑顔を見せる山下監督
最後にファンに向けて「群雄割拠というか、いろいろな作品がハイディテールに作られている中で、『超かぐや姫』という作品に目を留めていただいて、大変ありがたいなと思っていますし、これからも僕が監督した作品ならではの良さみたいなものをお届けして、自分と一緒に新しい景色みたいなものを見ていただけるといいなと思ってます」とメッセージを送り、インタビューを締めくくりました。
インタビューや舞台挨拶で山下監督の生の言葉から伝わってきたのは、妥協のない作品づくりへの情熱と、地域やファンに対する深い愛でした。皆さんもぜひ、作品の舞台裏に広がる緻密な世界観を感じながら、かぐやが駆け抜けたかもしれない静岡の歴史と風土に触れてみてはいかがでしょうか。












































































