​<高校野球静岡大会>「高部投手のおかげで成長できた」 準V・常葉大菊川ナイン、聖隷のエース左腕に感謝 挑んだ夏に悔いなし

全国高校野球選手権静岡大会は7月27日、しずてつスタジアム草薙で決勝を行い、聖隷クリストファーが常葉大菊川を4―2で退けて2年連続の甲子園切符を手にした。

常葉大菊川
000 000 002=2
400 000 00x=4
聖隷クリストファー

聖隷は初回に小金沢玲雄選手の満塁本塁打で4点を先行。高部陸投手は5安打2失点で完投した。菊川は九回に小柳祥太郎選手、佐藤大介選手、小川優人主将の3連打などで2点を返したが反撃が遅かった。

大きな壁になる

2年前の夏、菊川は4回戦で聖隷に敗れた。
その時、対峙したのが当時1年生の高部投手。六回途中から救援し3回2/3を1安打に封じられた。

2024年夏の4回戦で好救援した高部投手(左から3人目)

菊川の石岡諒哉監督には、1年生左腕がこれからチームにとって大きな壁になるという確信があった。
「このピッチャーを打たないと、甲子園はないぞ」
今の3年生にそう言い聞かせたという。

秋の敗戦

予想通り、順調に力を伸ばしてきた高部投手が立ちはだかった。

昨秋、県大会準決勝では1―4で敗戦。
菊川打線は9安打したものの要所で10三振を喫した。
石岡監督は「うちは100点のゲームをしないと勝ち目がない」と痛感した。
>>>昨秋の県大会準決勝「県内最強・常葉大菊川打線が見た高部陸」

「打倒高部」掲げた夏

「打倒高部」を掲げてこの夏を目指した。
速球対策としてピッチングマシンを160キロに設定。
シート打撃での状況設定も、「バッターにとって苦しい条件」(石岡監督)を付けて攻略法を練ってきた。「気持ちのいいバッティングは一切やってこなかった」と指揮官は言う。

その成果は、九回の連打に表れた。佐藤選手はボテボテの打球に全力疾走して内野安打にし、小川選手は甘く入った初球、変化球を逃さずとらえて適時打にした。

対策上回る進化

ただ、初回に4点という大きな援護を受けた高部投手は想定以上に手ごわかった。
かつて以上の直球の威力、制球力に加え、緩い変化球やクイックを織り交ぜて相手との間合いを操作するなど、投球術も巧みだった。

2年秋から高部投手とバッテリーを組む聖隷の筧優亨捕手はこう振り返る。
「最初は(高部の)いいボールだけを使おうと思っていたけれど、得意じゃないボールも使わないと抑えられないと思った」
昨秋の東海大会準決勝で三重打線に打ち込まれた後、力で押すだけでなく緩い球も積極的に使うようになったという。

高部投手自身、長所を伸ばすだけでなく、課題克服にも取り組んできた。
「去年までは内角に投げるのは苦手だったけれど、この1年間で打席にバッターを立たせて、投げ込みをしていく中で感覚をつかめて、腕が振れるようになった」

筧捕手は、決勝での菊川打線の戸惑いを感じ取っていた。
「待っているボールじゃない球も打っていたんじゃないか」

圧巻の48奪三振

9回をわずか89球、10奪三振1四球。要所で最速タイの150キロをマークした。
大会を通じた成績も6試合36回2/3を投げて21安打48三振4四球自責3と圧巻の内容だった。高部投手は「相手が向かってくるのを感じてしんどかったけれど、(投球の)バリエーションを増やしたことで、余裕を持って臨めた」と話す。DH制の導入で投手に専念できたことも、体力の温存につながった。

去年とは違う

1年夏から高部投手と対戦機会があった小川選手は、その進化に脱帽した。
「マシンの球以上だった。速いだけだと思っていたところに甘さがあった。映像だと意外とアバウトじゃないかと思っていたけれど、しっかりコースを突いてきた。あの球速なのでベース板からちょっと外に出るだけでも厳しいコースに見えたり、低いボールに見えたのが伸びてきてストライクになったり。去年みたいに力で押してコースを投げ分けるだけじゃなくて、クイックが入って間をずらしたりとか、一味違った高部投手だった」

佐藤選手(左)と小川選手

2安打した佐藤選手も「速球対策はしてきたし、甘い変化は打ちにいこうと思っていたので驚くことはなかったけれど、まっすぐのスピンは思う以上にあったし、躍動感も上がっていた」と相手のレベルアップを感じた。

最終打席の内野安打は直球勝負と読んでいたものの「思っていた以上に(キレが)いい球が来た」と、詰まらされた。
「4点差あったけれど、1点でも多く取りたいという気持ちがあったし、一分、一秒でも長く決勝をやりたかった。次のバッターにつなげようという気持ち。きれいなヒットじゃなかったけれど、気持ちが出たヒットだったと思う」

試合終了後、涙があふれて止まらなかった佐藤選手。「この日のために、ずっとやってきたので悔しい思いはあるけれど、悔いはないです」と敗戦を受け止めた。

縁あって静岡に

埼玉県出身の高部投手。縁あって高校生活を静岡県で過ごした。
甲子園を目指す静岡の高校球児にとって高い壁となったが、小川選手は「高部投手がいたから、チームのバッティングが向上し、いい打線がつくれたと思う」ときっぱりと言う。
そして「静岡の代表として、甲子園で頑張ってきてほしい」とエールを送る

来年につながる準V

菊川は2023年、25年と春の選抜に出場したものの、夏の甲子園は18年以来遠ざかっている。個々の能力が高いチームにあって、秋は大差のゲームで圧倒するものの、夏は苦戦していた。
〝高部対策〟に取り組む中で自然と、夏を勝ち抜くための課題だった「あと一歩の詰めの甘さ」(小川選手)を克服することになり、18年以来の決勝にたどり着いた。
「この経験は来年につながる」と小川選手。

感謝と敬意

世代屈指の打者として卒業後は「プロ1本」と明言する佐藤選手も同じ気持ちだ。
「(高部投手の)ストレートの伸びは全国でもトップレベル。すごいリスペクトしている。そういう相手が同じ静岡県にいたということは自分にとっての財産。秋も夏も戦えたのは、これから自分が野球を続けていく上でいい経験になった。そこは感謝したいです」
(編集局ニュースセンター・結城啓子)
 
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静岡県に関係する野球の話題を中心に、プロから社会人、大学、高校、中学まで幅広く取り上げます。新聞記事とは異なる切り口で、こぼれ話も織り交ぜながらお届けします。時々バレーボールの話題も提供します。最新情報は X(旧Twitter)「しずおか×スポーツ」で。

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