ダイエット目的の気軽な使用に待った!糖尿病治療薬「マンジャロ」を「やせる薬」として安易に使う危険性。重い副作用で入院になるケースも

近頃、SNSで痩せる薬として話題になっている「マンジャロ」。病気の治療のために適切に使えば非常に効果的な薬ですが、自己判断で使用すると重い副作用につながることがあります。このマンジャロについて、浜松医療センター内分泌代謝内科部長兼臨床研究管理センター・センター長の長山浩士先生に解説していただきました。聞き手はSBSアナウンサー井手春希。

井手:「マンジャロ」について、最近よく聞きます。「痩せる注射」なんて呼ばれたりしていますが、そもそもどのようなお薬なんでしょうか?

長山:マンジャロは元々、糖尿病の治療薬です。血糖値を下げるだけでなく、食欲を抑える働きもあるため自然と食べる量が減り、多くの患者さんで体重減少が見られます。血糖値と体重の両方に良い効果が期待できるため、糖尿病の治療で大きな注目を集めている薬です。

井手:糖尿病の患者さんにとっては大切なお薬ですが、今は体重が減るというところにフォーカスが当てられている印象です。同じような治療薬は、マンジャロ以外にもあるんでしょうか?

長山:そうなんです。実は最近、このような注射薬がいくつか登場しています。オゼンピックやウゴービ、ゼップバウンドといった薬です。糖尿病に使う薬もあれば、肥満症という病気の治療に使う薬もあります。

体重は減るけれど、単に痩せるための薬ではない!

井手:肥満症治療にも使われるのですね。では、これらは痩せる注射ということで考えていいんでしょうか?

長山:そこが大切なポイントです。確かに体重は減りますが、単に痩せるための薬ではありません。糖尿病や肥満症といった病気を治療するための薬なんです。

井手:肥満症というのはどのような病気で、そしてマンジャロは誰でも使えるということなんでしょうか?

長山:まず、保険診療ではマンジャロは糖尿病の治療薬として使われます。成分は同じでも、肥満症の治療にはゼップバウンドという薬が使われており、疾患によって使い方が異なりますので、その点はご注意ください。

そして、体重が多いだけでなく、高血圧や高脂血症、脂肪肝など、肥満が原因で健康に影響が出ている状態を肥満症と呼び、治療の対象になります。こうした健康障害を改善することが治療の目的です。

ただし、肥満症の治療薬を保険で使うためには、体重や合併症など一定の要件があります。また、まず薬を使うのではなく、食事や運動の改善に取り組むことが前提になっています。ですから、誰にでも使えるわけではありません。

井手:医師の診断のもとで処方されるのですね。マンジャロを含めたこうした薬の、危険性や副作用はどのようなものでしょうか?

長山:食欲を抑える作用があるので、その作用が強く出た場合、例えば吐き気、もたれ、下痢や便秘などの症状が出ることがあります。

私たちは糖尿病治療で同じ系統の薬を以前から使っていますが、体重がそれほど多くない方では、少量でもよく効く一方で、副作用が強く出ることがあります。マンジャロやゼップバウンドは体重減少作用が大きい薬ですので、体重が多くない方では作用が強く出やすい可能性があります。実際に痩せ薬として使った結果、重い副作用で入院が必要になったケースも報告されております。

井手:そうなんですね。

必要とする患者さんへ行き渡らなくなる懸念も

井手:このマンジャロが、今ネットなどで「痩せ薬ですよ」なんて販売されているのを見かけます。こういった現状は、医療現場からはどのように見ていますか。

長山:私は非常に注意が必要だと思っています。本来は医師の管理の元で使う薬です。副作用が出ることもあり、医師の指導なしに自己判断で使ってはいけません。

また、インターネット上では、海外製品や正規の流通ルートを通っていない薬が販売されていることもあります。それが本当に正しい成分の薬なのかわかりません。

さらに、こうした薬は温度管理も非常に重要ですが、適切に保管されていたかどうかも確認できません。ですので、「痩せたいから」とネットで買うのではなく、まずは医療機関で相談していただきたいと思います。

井手:病院以外での購入は控えた方がいいということですね。本当に肥満症や糖尿病に悩まされている患者さんにとっては、その薬が手に入らなくなる供給不足の懸念もあるのかもしれません。現在はどのような状況でしょうか?

長山:この問題は、医療現場でも大きな課題です。こうした薬は世界的に需要が非常に高く、一時期は糖尿病の患者さんに必要な薬が十分に行き渡らないこともありました。

現在は以前より改善していますが、薬によっては供給が不安定になることがあります。本来必要な患者さんにしっかり薬が届くようにするためにも、適切に使うことが大切だと思います。

あくまで病気の治療薬。痩せるために必要なのは、健康的な生活習慣

井手:最後にリスナーの皆さんに注意喚起を含めてメッセージをお願いいたします。

長山:マンジャロを始めとする新しい薬は適切な患者さんに使えば非常に効果的な治療です。一方で、「痩せる注射だから使ってみよう」、そういう薬ではありません。実際、糖尿病も肥満症も薬だけで解決するわけではありません。食事や運動など生活習慣の改善を続けながら使うことで、初めて大きな効果が期待できます。

マンジャロやオゼンピック、ウゴービ、ゼップバウンドなどは非常に優れた薬です。しかし、痩せる薬ではなく、病気を治療する薬であることをぜひ忘れないでいただきたいと思います。

体重や健康状態が気になる方は、ご自身が本当に治療の対象になるかも含めて、まずはかかりつけの先生にご相談していただきたいと思います。そして、まずはできるところから、健康的な生活習慣に一つ一つ取り組んでいただきたいと思います。

井手:若い世代を中心に今話題になっていますが、安易に考えずに、悩まれている方は医師に相談してみるというのがいいというお話でした。長山先生ありがとうございました。
※2026年6月24日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

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