年内入試ってどんなもの?
青木:「年内入試」とは、具体的にどの入試のことを指すんですか?石渡:年内入試とは、文字通り年内に実施する入試のことです。具体的には総合型選抜、学校推薦型選抜を指します。中高年の方には聞き慣れないワードだと思うのですが、ちょっと前まではAO入試、推薦入試という名称でした。
高校3年生が終了する前年の9月あるいは11月頃に実施されるというところから、年内入試という呼称になっています。
青木:もうAO入試って言ってないんですよね。
石渡:そうなんです。
青木:私が学生の頃は推薦って言っていましたが、今は総合型選抜・学校推薦型選抜という名前なのですね。この年内入試の面接義務化には、どういう背景があるんですか。
石渡:学力テスト型、あるいは基礎学力テスト型と呼ばれる形式の年内入試についての面接が必須化されました。この基礎学力テスト型というのは、2024年に東洋大学が導入した入試形式です。名前の通り、特に面接を課さずに基礎学力テストの成績だけで合否を判定するという形式になります。2024年に東洋大学が導入した際、志願者数が約2万人と大当たりしました。
青木:すごいですね。
石渡:面接が特になく、小論文もなく、基礎学力テストだけで合否を判定する。これはほとんど一般入試と変わりません。そのため、「一般入試の前倒しでは」との批判が高まりました。
ただ実は、基礎学力テスト型、関西の私立大学では、30年以上前から実施されています。
東洋大学の方は非難されるのに、関西の私立大学は30年以上前から導入しているから問題ない。これではちょっと整合性が取れません。それで1回変更になったのですが、今年改めて、文部科学省は、基礎学力テスト型でも面接を必須とすること、そして既に実施している大学については、猶予期間が2年あることなどを発表しました。
「学力テスト型」は、面接や小論がなくて受験生に好都合だった
青木:東洋大学が基礎学力テストを実施して大当たりしたのは、どうしてだと推測されますか?石渡:首都圏の高校生だけの話ではないのですが、年々、大学入試のハードルが上がっています。高校生もそのことを肌身で感じていて、「できれば早いうちに合否を確定させたい」という思いが強くなっています。
ところが総合型選抜、あるいは学校推薦型選抜での面接や小論文というのは、だんだんハードルが上がる傾向にあり、対策が容易ではありません。その点基礎学力テスト型であれば、学力テストで合否を判定することになりますので、学力に自信がある高校生にとっては、「これは便利」ということで志願者数が一気に増えたとみられます。
青木:なるほど。これまでの入試では面接が重要とされていたんですか。
石渡:はい。総合型選抜、学校推薦型選抜はそれぞれ定義が微妙に異なりますが、どちらも本来は面接などを通して、受験生の志望意欲や入学後の学習研究意欲、あるいは人間性、教養といったところを見ていきます。
ところが、基礎学力テスト型だと、学力テスト、あるいは基礎学習テストの成績だけで合否を判定するということになります。
青木:一般入試とほぼ一緒ってことですもんね。
石渡:そうなんですよ。これだと一般入試の前倒しを黙認するということになりかねません。さらにこの基礎学力テスト型は、高校によって対応に差が出てしまいます。履修範囲を早く終わらせる私立高校、特に中高一貫校であれば、行事の数なども少ないため中高6年間のうち5年間で履修範囲を一応全部終わらせるということが可能なんですね。
青木:トップクラスの高校だと、高校1年生の段階で高校3年生までのカリキュラム全部を終わらせる、なんてところもありますもんね。
石渡:多少学習ペースがゆっくりなところでも、高校3年生の1学期ぐらいまでには履修範囲が終わっていて、その後は入試対策に充てるといったことが可能です。そのため、基礎学力テスト型は、私立、特に中高一貫校であれば有利になります。一方で、学年のカレンダー通りに履修範囲が進んでいく公立高校の場合、学力テスト型が実施される9月、あるいは11月というのは、まだ履修範囲が全部終わっていないのでどうしても不利になってしまいます。こういった格差が背景にあるといったところからも、面接が必須化されました。
来年度以降の年内入試に影響か
青木:今回は猶予期間があるということですが、来年度以降面接必須化という話でしょうか。石渡:はい。大学入試で重大な変更を行う際は2年前に告知するという通称「2年前ルール」というものがあります。大学入試や、学部学科の改変・新設といったものについては、「来年からやります」だと、今まで準備してきた受験生が不利になったり、「事情を知らなかった」ということになりかねません。そこで、文部科学省が2年前には必ず告知をするようにと定めています。
今回、2年間の猶予期間と文部科学省は表現していますが、これは「2年前ルール」のことを指しています。そのため、基礎学力テスト型を既に導入している私立大学などで、今年すぐ変更というところはほぼないと思われます。来年または再来年に面接を必須化する大学が多いとみられています。
青木:年内に行う入試ですと指定校推薦や自己推薦で受験する人もいると思います。
石渡:はい。指定校推薦や自己推薦など、基礎学力テスト型以外の年内入試というのは、その多くが元々面接を選考の一つにしています。そのため、今回の面接必須化は、あくまでも基礎学力テスト型が対象になるので、変更や直接影響はあまりないかなと思います。
青木:面接が必須になると、例えば東洋大学を2万人が受験する場合、2万人の面接はちょっとハードルが高いですよね。
石渡:そうなんです。この面接必須化は、面接をすることで受験生の人間性、志望意欲などをちゃんと見ていくということで一見いいことずくめのように見えるんですが、手間暇の問題から、志願者全員を面接するのはちょっと考えづらいところです。そのため、面接必須化で既に基礎学力テスト型を導入している大学の入試が大きく変更する可能性があるのは当然なんですが、具体的には形式上のものになるのかなと。
例えばですが、基礎学力テスト型だと、一次選考を基礎学力テストにして、二次で面接を実施するといった形になることが有力です。
東洋大学だと志願者が2万人いますので、全員への面接実施はどう考えても物理的に無理があります。基礎学力テストを1次選考にして、一次選考通過者を大きく絞り込む。その上で面接ということであれば、学科の教員も面接に対応することが可能になります。
青木:最後に、今後の大学入試全体への影響をお聞かせください。
石渡:面接が必須化になっても、年内入試を志望する高校生は静岡県内でも今後増えていくものと見られます。その延長から進路関連の行事、イベントといったものは静岡県内の高校は公立私立問わず、前倒し傾向にあり、今後もその傾向が続き、高校生の進路決定の時期にも影響が出ると思います。
青木:石渡さん、ありがとうございました。













































































