(文・写真=高度専門記者兼論説委員・橋爪充)

静岡市が拠点の女性劇団「HORIZON(ホライゾン)」をけん引した草野冴月さん、天野仁さんが3月末で退団し、4月3日にART collective「言祝(ことほぎ)」を設立。パフォーミングアーツや演劇に限らない、さまざまな分野のアーティストとのコラボレーションを望むという。
『天の川に告ぐ』はそんな彼女たちの初公演。草野さんが書いた脚本を、草野さん、天野さんの二人だけで演じた。注目すべきはその会場だ。鈴木邸は安倍川の河口から13キロほどのところにある古民家で主屋など8件が登録有形文化財になっている。
舞台美術、照明、ダンスなどいわゆるエンタメ要素満載だったHORIZONの公演とは180度異なるこの会場を選んでいる時点で、新たな一歩を刻む気概を感じた。その意気や良し。
作品の主な舞台は約20畳の大広間で、床の間の前に長机が置かれ、演者の二人は主にその周辺を動く。時折、引き戸を開いて中庭に出たりもする。照明はつり下げ式の白熱灯。観客が待ち構える背後の玄関から「ただいま」という発声が聞こえて演目がスタートした。
喪服にも見えるモノトーンの上下で現れた二人。やはり、誰かの葬儀の後であるようだ。亡くなったのは草野さん演じる祈(いのり)の母で、天野さん演じる永久(ながひさ)は祈と母についていろいろ詳しい。

長机を間に、麦茶を飲みながらの会話劇。草野さんの脚本としては新境地ではないか。どこぞの研究所の研究員らしい天野さんのせりふが低体温を保っている。
性別もはっきりしなかった二人の素性が、次第に明らかになっていく。草野さんは女性だが、どうやら「普通の」女性ではない。天野さんは男性で、祈に対して特別な感情を持っているようだが、果たしてそれは「愛」なのか。
会話が進むうちに二人の立場が一つ、また一つと明らかになっていく。途中から、祈の母と父のドラマがシームレスに差し込まれる。幕や暗転なしに、二つの時代を行き来する。設定がSF的なのに、見ている側が混乱することはない。脚本が巧みだ。
鈴木邸の畳敷きの部屋が、祈の実家の客間にはっきり変貌していた。座布団を敷いた客席の一人一人は、親戚や縁者のような立ち位置で演目を見守った。
演目を鑑賞した、というより、実家の寄り合いの隣の部屋で交わされた会話に聞き耳を立てているような感触。私たちの日常を侵食するような演劇空間を作り出した演者二人の力量に感服した。
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■ART collective「言祝」の『天の川に告ぐ』
脚本・演出:草野冴月
出演:草野冴月、天野仁
会場:登録有形文化財「鈴木邸」(静岡市葵区中ノ郷249)
今後の開演日時:7月5日(日)午後3時
入場料:一般2000円、学生1000円、未就学児無料
問い合わせ:090(9640)9748












































































